3月27~29日に日本大学で開催された第127回日本森林学会において、本学農学研究科の石井弘明准教授が「平成28年日本森林学会賞」を受賞しました。受賞業績は「高木の樹高成長制限に関する生理生態学的研究」です。

石井准教授は、樹高世界一のセコイアや日本一の秋田スギなどを対象に、樹高成長を規定する生理生態学的メカニズムを解明する研究に取り組んできました。これまで、高木の樹高成長は、根から葉へ水輸送の限界によって制限されていると考えられてきました。一方、世界にはセコイアのように高さ100mを超える巨木が存在します。これらの樹木がどのようにして樹高成長制限を克服しているのかは、植物学の大きな謎でした。石井准教授らは、ロープを使ってセコイアや秋田スギに登り、樹上の葉を採取、測定することで、樹上の葉には貯水タンクの役割をもつ組織があり、雨や霧、露などの樹上の水分を吸収、利用していることを明らかにしました (Ishii et al. 2014, Azuma et al. 2016)。この研究成果は、どんな高木であっても根からの水分供給に頼っている、というこれまでの常識を覆すものであったため、2014年5月に米科学誌Scienceにニュース記事が掲載されました。

石井准教授によると、この研究の着想に至ったきっかけは、夜明け前にセコイアに登ったとき、樹上の葉に無数の朝露がついているのを見たことだそうです。このようなインスピレーションは、実際に木に登って樹木自身がおかれている環境条件を体感することによってしか得られません。秋田スギの調査では、高さ50mの梢端部まで液体窒素を持って登り葉を凍結保存するなど、石井准教授は、これまで地上から見上げるだけだった巨木の樹冠において、文字通り命がけで研究を行ってきました。また、その研究成果は、森林科および植物学分野の多数の国際誌に掲載されています。このような研究業績が高く評価され、日本森林学会賞の受賞に至りました。

掲載論文

  • Ishii, H.R., Azuma, W., Kuroda, K.,Sillett, S.C. (2014) Pushing the limits to tree height: could foliar waterstorage compensate for hydraulic constraints in Sequoia sempervirens? Functional Ecology 28:1087-1093.
  • Azuma,W, Ishii, HR, Kuroda, K, Kuroda, K (2016) Function and structure of leavescontributing to increasing water storage with height in the tallest Cryptomeria japonica trees of Japan. Trees 30:141-152.

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