本学工学部及び工学研究科出身で、「ネオジム磁石」を発明した佐川眞人氏(現在、NDFEB株式会社を設立 代表取締役社長並びに大同特殊鋼株式会社顧問)が、工学分野において人類に著しい貢献をした個人もしくは団体に贈られる、英国の「エリザベス女王工学賞」の受賞者に決定しました。
?
ネオジム磁石誕生まで
佐川眞人氏は、1962年に神戸大学工学部電気工学科に入学、1966年に同大学院工学研究科電気工学専攻に進学し、研究科共通講座で材料科学の研究を行われていました。
1968年、東北大学大学院博士課程に進学し、1972年に工学博士号を取得して、富士通研究所(川崎)に入社し、電話交換機用の半硬質磁性材料の開発チームに配属され、これが、磁性材料との出会いとなりました。
当時世界最強で広く使われていたサマリウム?コバルト(SmCo)永久磁石を用いて、機械的に壊れにくいフライングスイッチの実用化を目指していました。その研究過程において、同じ希土類でもSmより入手しやすいネオジム(Nd)と鉄(Fe)を組み合わせた永久磁石が、世の中で研究されていないことに疑問を持つようになり、正規業務の傍ら、独学でNd?Fe?(ブロム)B磁石の研究を続けられました。これがSmCo永久磁石の性能を超える可能性があることがわかってきたので、会社に業務としてNd?Fe?B永久磁石の研究を申し出ましたが、会社の方針が、磁気スイッチより磁気テープや半導体の研究に向かっていたため、採用されませんでした。
そこで一念発起して、1982年、大阪にある住友特殊金属(後の日立金属株式会社)に転職し、Nd?Fe?B永久磁石の試行錯誤を繰り返した結果、当時世界最強のSmCo永久磁石の性能を超えるネオジム永久磁石の製作に成功しました。もし、この磁石が誕生していなかったら、現在世の中で広く使用されている小型のハードディスクや車載用エアコンの普及が何十年も遅れたと言っても過言ではありません。現在、佐川氏は2013年に自身で設立したNDFEB株式会社で、電気自動車(EV)用モータに使われる新しい永久磁石の開発に従事されています。
(総務部広報課)