神戸大学経済経営研究所は、12月7日に、神戸大学社会システムイノベーションセンターと共催で、神戸大学創立120周年記念シンポジウム「地域金融機関による地域中小企業支援の新しい展開-金融機関による人材マッチングの現状と課題-」を開催しました。
ポストコロナの社会において、地域中小企業は新分野や新規事業に挑戦しなければなりません。その挑戦を担う社内人材が十分ではなく、中小企業の困りごとのトップに人材不足があがっています。こうした中、地域金融機関による企業支援が、資金繰り支援にとどまっていては十分な効果を持たなくなっています。規制緩和もあり、新しい非金融支援ツールとして人材マッチング事業に乗り出す金融機関が増えています。
そこで、本シンポジウムでは、金融機関による人材マッチングの取り組みの現状と課題について、相澤朋子専任講師(日本大学商学部?神戸大学経済経営研究所非常勤講師)による総合司会のもと、研究者と実務家による講演とパネルディスカッションを行いました。
始めに、中村保理事?副学長による挨拶がありました。続く 第1部では3名の方による基調講演が行われました。最初は笹尾一洋さん(内閣官房 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局兼 内閣府本府地方創生推進室 企画官)が「金融機関による人材マッチングへの取り組みの概観」について、2番目に岩崎俊一郎さん(株式会社北海道共創パートナーズ 代表取締役社長)、松橋敬司さん(株式会社北海道共創パートナーズ 人材事業責任者)が「北洋銀行グループにおける人材マッチング事業の取り組み」について、3番目は経済経営研究所の家森信善教授が「金融機関による人材マッチングの前提としての事業性評価の重要性」について講演を行いました。
第2部のパネルディスカッションでは、家森信善教授の司会により、今泉宣親さん(金融庁地域金融企画室長)、岩崎俊一郎さん、大橋歩さん(PwCコンサルティング合同会社 公共事業部 ディレクター)、亀井芳郎さん(兵庫県プロフェッショナル人材戦略拠点 戦略マネージャー)、竹下浩司さん(東濃信用金庫常勤理事?とうしん地域活力研究所長)らがパネリストとして参加し、基調講演で紹介のあった「先導的人材マッチング事業」での実際の取り組みや、それに対する支援について、またREVICareer(レビキャリ)など、副業や出向?転籍といった様々な形態で地域発展につなげられる環境が整いつつあることが紹介されました。地域金融機関が大手人材マッチング会社に比べて優位な点は、日ごろからの事業性評価による企業に対する深い理解と寄り添う姿勢にあること、また逆に、人材マッチングの取り組みが事業性の理解にも好影響を与えていることについて、様々な議論が行われました。さらに、視聴者から寄せられた質問やコメントに対し、時間の許す限り回答しながら活発な討論が繰り広げられました。
Zoomウェビナーを使ったオンラインを通じ、全国から160もの企業?組織と個人の方に参加していただきました。参加者の皆様からは、「金融機関ならではの伴走型人材支援に今後さらに期待したい」「活躍のフィールドが地方にあることがわかり、これを機にセカンドキャリアについて真剣に考えていきたい」といった意見があり、金融機関による人材マッチングの取り組みの現状と課題について理解を深める良い機会を得ることができたと高い評価の声をいただきました。
(経済経営研究所)