地域課題解決をテーマにした若手研究者らの研究を神戸市が支援する「大学発アーバンイノベーション神戸」の成果報告会が2023年2月9日、神戸大学百年記念館六甲ホールで開かれました。神戸大学の研究者4人のプレゼンテーションに続いて、「地域課題解決に向けた産官学連携の在り方」と題して、久元喜造神戸市長や藤澤正人神戸大学長ら6人が討論しました。会場とオンラインを合わせて約180人が参加し、ホール内では研究内容の一部がパネルで紹介されました。
「大学発アーバンイノベーション神戸」は、主に人文、社会学分野の若手研究者の研究を身近な地域課題や行政課題の解決につなげる目的で、神戸市が令和2年度に導入しました。研究者が自由に提案する場合は1件あたり300万円を上限に研究費が助成され、企業と連携した提案は1件あたり1200万円が上限となっています。令和4年度までの3年間で、神戸大学や関西学院大学、兵庫県立大学の研究者らの研究計45件が採択されました。
成果報告会は初めて開かれ、採択された神戸大学の4人の研究者が発表しました。加藤明恵必威体育研究科助教は「灘の酒造家吉田家の文化?学術活動の研究」について報告し、衣笠智子経済学研究科教授は「神戸市農業のイノベーション促進要因の探求~IT導入と6次産業化に注目して~」と題し、神戸市内農家へのアンケートの分析結果などを紹介しました。沖侑太郎保健学研究科助教は、神戸大学が開発した認知症予防プログラムについての実証研究の内容を解説しました。寺田努工学研究科教授は楽天モバイルなどとチームで研究した「スタジアム体験における自然な混雑緩和に寄与する要素の探索」をテーマに、サッカーの試合ではポイント付与などのインセンティブで帰宅が分散されるという研究成果を紹介しました。この研究は、このほど内閣府の第5回日本オープンイノベーション選考委員会特別賞を受賞しました。
続いて行われた討論会では、勝沼直子神戸新聞論説委員長をファシリテーターに藤澤正人学長、久元喜造神戸市長、永吉一郎神戸デジタルラボ社長ら5人が、大学と自治体、企業が地域課題の解決にどう連携していくかについて話し合いました。まず、辛島理人国際文化学研究科准教授が、採択された研究テーマの「神戸のユダヤ人観光の可能性について」の研究活動を踏まえ、「通年で安定した集客を」などと訴えました。「神戸市域に所在する文書群の調査?活用?公開に関する研究」で採択された井上舞必威体育研究科特命講師は、地域で歴史資料を保存することを求めました。
藤澤学長は「大学も自治体と車の両輪になって、さまざまな地域課題の解決に取り組んでいきたい」と強調し、久元市長は「グローバル社会で都市は歴史を尊重することが大切。新設する公文書館でしっかり保管し、地域でも個人が保管する文書の保存方法を考えたい」などと話しました。また、永吉社長は「地域課題解決のためにこの取り組みが続くことが重要。企業としてもふるさと納税などで支援していきたい」などと応じていました。
(地域連携推進本部)