神戸大学大学院経営学研究科と株式会社三菱UFJ銀行(以下、「三菱UFJ銀行」という。)は、相互に連携し、本研究科の教育研究の一層の充実と大学院の学生の資質の向上を図り、相互の研究交流を促進し、もって、わが国の学術及び科学技術の発展に寄与するため、2023年3月に連携大学院に関する協定を締結し、2023年4月1日から本研究科に連携講座「ファミリービジネス講座」を設置しました。なお、連携講座を金融機関と設置することは初めてとなります。

1.趣旨?目的
(1)連携の趣旨と目的

本連携講座「ファミリービジネス講座」は、研究者養成のための博士課程前期課程及び後期課程(PhDプログラム)の一環として、ファミリービジネスの健全な持続可能性の向上に寄与すること、また、専門職学位課程(MBAプログラム)の一環として、現実のケース事例を教材とした実践的経営教育を行うことを目的とし、ファミリー企業の後継者、経営幹部及びその支援を行う各サービスの提供者の育成とスキルアップを目指すものです。

経営学研究科では、2022年3月に三菱UFJ銀行及びNPO法人現代経営学研究所との間で、ファミリービジネスの研究?教育に関する包括連携協定を締結し、同年4月1日にはファミリービジネス研究教育センターを設置しています。この包括連携協定を展開する具体的な取り組みとして三菱UFJ銀行との間で連携大学院に関する協定を締結しました。


(2)連携の必要性

近年、ファミリービジネスに対する関心が産業界と学界の双方で高まりつつあります。その背景には、一見、後進的な経営とみられがちなファミリー企業の企業業績が非ファミリー企業と同等か、それを上回っている研究成果があること、長寿企業が多いこと、地場企業との取引関係や雇用を通じて、地域経済の中心として重要な役割を果たしていること、SDGsなど社会的課題の解決やスタートアップ支援等に対する資金提供者として高い役割期待があることなどが挙げられます。

今日、ファミリー企業は事業承継、後継者育成、ガバナンス、意思決定の不透明性など、多くの課題を抱えています。一方で、日本におけるファミリービジネスに関する研究?教育は、著しく遅れています。本講座は、多くのファミリー企業と密接なネットワークを有する三菱UFJ銀行と連携することを通じて、ファミリービジネスに関する研究?教育を加速化させることで、ファミリービジネスの健全な発展や持続可能性の向上に寄与していきます。

2.連携講座の内容

連携先となる三菱UFJ銀行は、三菱UFJフィナンシャル?グループの中核となる銀行であり、国内最大の金融機関です。近年、三菱UFJフィナンシャル?グループは、中期経営計画において優先的に取り組む10の社会課題を特定しています。ファミリービジネスの後継者問題を含む「少子?高齢化への対応」もその社会課題の一つです。本講座は、ファミリービジネスと多くのネットワークを有する同行と経営学研究科が連携することで、ファミリービジネスに関する研究や教育の高度化を目指すものと位置付けられます。

本講座が想定する受講者は、ファミリービジネスの健全な発展と持続可能性の向上に おいて重要な役割を果たすと考えられるファミリー企業の後継者、経営幹部及びその支援を行う各サービスの提供者です。

本講座では、以下の教育研究活動を通じて、ファミリービジネスの健全な発展と持続  可能性の向上を担う人材の育成を行います。


  • ファミリービジネスの永続性を探ることを目的としたファミリービジネス研究の理論と実践(ケース)にかかる研究
  • 上場企業ファミリービジネス創業家と資本市場(投資家等)の関係性にかかる研究
  • ファミリービジネスをテーマとする専門職学位論文の作成のための研究指導
3.連携講座の組織
専攻名:経営学専攻、現代経営学専攻
講座名:ファミリービジネス講座
客員教員:教授1名(三菱UFJ銀行から非常勤講師を受入れ、客員教授の称号を付与する)
4.教育課程の特色

PhDプログラムは、経営学研究のコアとなる理論を取り扱う「特論」科目、研究メソドロジーを解説する「方法論」科目、各分野の最先端の研究テーマを内容とする「特殊研究」科目のほか、学位論文の作成指導のための「研究指導」から構成されます。現在のこれらの科目群の中には、ファミリービジネスに関する科目がありませんが、同領域に対する研究?教育に対する社会的ニーズが高まっており、本連携講座はこの観点から、PhDプログラムの充実に資するところが大きいと言えます。

MBAプログラムは、経営学の基礎理論の教育に加えて、基礎理論を現実の企業経営問題に適用して解決策を考察する「応用研究」科目に重点を置いて実施されています。本連携講座では、ファミリー企業が直面している問題を織り込んだケース教材を用いて行う「ファミリービジネス応用研究1、2」の講義及びこれに関連した研究指導を行います。元々、MBAプログラムは、関西圏の大企業の従業員を主要な対象としてきましたが、近年ではファミリー企業、中小企業、スタートアップ企業等の経営者や後継者が増えつつあるため、このようなニーズをとらえた本講座の実施は、MBAプログラムのさらなる充実に資することが期待されます。

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(経営学研究科ファミリービジネス研究教育センター)