本学など京阪神の3国立大学(京都、大阪、神戸)の総長?学長が経済界と討論する「3大学シンポジウム」(日本経済新聞社、日本経済研究センター主催)が11月1日、大阪市内で開かれました。テーマは「関西の産学が創る脱炭素社会」。神戸大学の藤澤正人学長、京都大学の湊長博総長、大阪大学の西尾章治郎総長、川崎重工業の橋本康彦社長、紙パック入りのミネラル水販売を手掛けるハバリーズ(京都市)の矢野玲美社長が、脱炭素に向けた産学の役割や連携などについて議論しました。

藤澤学長は、クリーンエネルギーとして注目される水素関連の研究拠点「水素?未来エネルギー技術研究センター」の開設など、神戸大学が進める多様な取り組みを紹介しました。そのうえで、産学連携のあり方について「研究者個人のレベルにとどまらず、大学として企業や自治体などと組織同士の連携を図ることで、社会課題の解決にさらに貢献することができる。脱炭素社会の実現に向けては、企業だけでなく地元自治体との連携も欠かせない」と強調しました。

議論では、人材育成、若手研究者の支援も大きなテーマとなりました。藤澤学長は「脱炭素に限らず、未知の分野の研究を進めるには、長期的視野に立った若手研究者の支援が欠かせない。世界中から研究者に来てもらい、切磋琢磨できる研究環境を構築していくことも必要だ」と話しました。新たな技術を社会実装し、ビジネスとして育てていくために、起業や組織マネジメントに関する教育が必要となる点も指摘しました。

京大の湊総長、阪大の西尾総長も、脱炭素社会の実現に向けて各大学で取り組む研究や拠点の整備などについて紹介。湊総長は、日本全体の技術の層が薄くなっていることに危機感を示し、「産学連携の基礎として、大学は技術の層を厚くする役割を担っている」と話しました。阪大の西尾総長は「新たな技術を社会実装する際には、ELSI(倫理的?法的?社会的課題)に取り組む人材が不可欠」と今後に向けた課題を挙げました。

議論に先立って基調講演した川崎重工業の橋本社長は、水素エネルギーの利活用に向けた同社の事業を説明しました。また、同社などが出資する神戸の企業「メディカロイド」が製造し、医師である藤澤学長も開発にかかわった国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」の実現の苦労にも触れ、「大学が医療の現場をオープンにし、さまざまなノウハウを提供してもらえたからこそ開発できた」と産学連携の成果を語りました。

(総務部広報課)