神戸大学大学院理学研究科の津田明彦准教授が、光オンデマンドケミカル株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役CEO:津田明彦)を、本年4月1日に創業しました。同社では、神戸大学大学院理学研究科?津田研究室で生まれた科学と技術による社会貢献を目指します(図1)。下水?海水?空気を原料として、光で化学品(医農薬原料やポリマーなど)をつくる「光ものづくり」で、カーボンニュートラルおよびSDGsに貢献いたします。国や自治体、企業や金融機関、大学、および科学技術振興機構(JST)や国立研究開発法人新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)などと連携し、オールジャパン体制で、産学官金コンソーシアムによる研究開発と事業展開を行います。
図1. 津田グループオリジナルの光オン?デマンド合成法による有用化学品(ホスゲン化生成物)の生産スキーム
設立の背景
[社会的背景] ①地球沸騰化時代が到来し、世界規模での温室効果ガス削減が急務となり、化学品生産分野においてグリーントランスフォーメーション(GX)が強く求められています。また、②近年の情報技術のめざましい発展により、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産の効率化や新製品の創出が求められています。さらに、③コロナ禍や戦争等による国際社会の不安定化による化学品原料の海外調達のリスクが顕在化し、国産の資源を原料にして、国産の新たな科学?技術による、安全?安価?低環境負荷の革新的な方法による、化学品生産の国内回帰が求められています。持続的な社会の実現(SDGs)に向けて、それらの解決は待ったなしの社会的優先課題となっています(図2)。
図2. 化学品生産業が直面している3つの課題
[科学的背景] メタン(CH4)は地球上で最も豊富に存在する炭化水素であり、天然ガスの主成分であり、また微生物による家畜の糞尿や生ゴミの分解によっても発生します(図3)。メタンは主に発電や都市ガスなどの燃料として使用され、燃焼してエネルギーを発してCO2を生成します。メタンはCO2の主たる排出源であるだけでなく、それ自身もCO2の約25倍の地球温暖化係数を持ちます。
図3. 削減が求められている代表的な2つの温室効果ガスと、
それらの削減に向けた津田グループの着眼点
それらの理由から、メタンを化学品合成原料として利用することが強く望まれてきました。しかし、メタンは非常に安定な化合物であり、また、化学反応を起こしても複雑な混合生成物を与えることが多いため、それを原料とする工業的化学品生産は困難であると考えられてきました。
光オンデマンドケミカル(株)の強みと事業展開
神戸大?津田研究室では、約15年の研究を経て、クロロカーボン類およびメタンを原料とする光オン?デマンド化学品合成に世界で初めて成功しました。現在までに約40件の国内および国際特許を取得し、当該新化学反応の実用化に向けて光オンデマンドケミカル(株)を創業しました。同社では、当該化学反応の工業利用に向けたさらなる研究開発を行い、これまでに前例のない、下水?海水?空気を原料とするエコ化学品生産事業を展開いたします。自社生産と共同生産の両輪で社会への貢献を目指します。
支援機関
光オンデマンドケミカル(株)の創業に向けて、津田グループはこれまでに、神戸大学イノベーション(KUI)、JSTやNEDOからの支援を受けて、事業化に向けた研究開発を行ってきました。また最近では、大阪産業局の関西スタートアップインキュベーションプログラム「起動2期」に採択され、関西から世界に広がる事業として、未来社会でグローバルに活躍するスタートアップへの成長が期待されています。
光オンデマンドケミカル(株)の企業概要
所在地:神戸市灘区六甲台町1-1 理学部A棟228
役員:代表取締役CEO 津田 明彦
HPや連絡先:順次開設予定
事業内容:光オン?デマンド有機合成法による有用化学品の小規模多品種での受託生産および共同生産
製品:ホスゲン化生成物(クロロギ酸エステル、イソシアネート、Vilsmeier試薬、α-アミノ酸N-カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、カーボネートなど)
ホスゲン化生成物誘導体(エステル、アミド、アルデヒド、ウレタン、尿素誘導体、非対称カーボネートなど)
図4. 光オンデマンドケミカル(株)が生産可能なホスゲン化生成物およびその誘導体
?関連サイト
?問い合わせ先
神戸大学 大学院理学研究科化学専攻 准教授 津田明彦
TEL:078-803-5671 E-mail:tsuda[at]harbor.kobe-u.ac.jp
※ [at]は @ に置き換えて下さい。