神戸大学名誉教授 黒田慶子が代表者を務め、農学研究科森林資源学研究室助教 東若菜 及び 修士1年門雅稀、シェアウッズ代表 山崎正夫、ひょうご森林林業協同組合連合会 松岡達郎、信州大学教育学部教授 井田秀行、(株)山川草木代表取締役 香山由人 で構成される里山広葉樹活用研究会が取り組む「里山資源の流通で循環型社会を目指す」活動が、第4回SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(SDGs岩佐賞)を受賞しました。

本研究会は、放置された里山の未利用資源を活用することによって、森林の持続性を確保し、環境を保全することを目指しています。家具や床材に使える樹木を立木の状態で調べてデジタルカタログ化する「MORI TAGシステム」を導入し、里山の資源循環を促す活動を進めています。

(受賞内容詳細:https://www.asahi.com/sdgs/article/15186024)

活動の背景:1950年代の燃料革命および化成肥料の普及により、長年にわたり燃料などに利用してきた里山は半世紀以上放置されています。放置された里山では若齢の後継樹がなく、伝染病「ナラ枯れ」が発生して集団枯死が広がり、自然に任せるのでは持続しないことがわかってきました。資源の循環的利用を再開すると健康に持続することがわかってきましたが、森林の所有者が「無価値な山」ととらえていることが課題で、燃料ではない現代向けの利用方法の検討や仕組みづくりから進めることにしました。

主な活動と成果:里山のナラ、カエデ、サクラなどは家具や床材に使うことができますが、現在は海外からの輸入木材に依存しています。国内の里山にある木の多くは安価なパルプチップとして流通しており、森林所有者の収入にするには流通ルートを開拓する必要がありました。そこで、伐採して原木市場に並べるのではなく、立木の状態で樹木をデジタルカタログ化する「MORI TAGシステム」を作成しました。「山の在庫の見える化」の試行は日本各地の自治体や林業関係者と共同で実施し、国内の家具メーカーが伐採前に購入を決定して伐採~製材~納品する実証例も得られています。また、このような里山資源の流通を促進していくために、山林所有者および地方自治体と購入希望企業との協議や検討会の場づくりやシンポジウムなどを実施してきました。

今後の活動の展望:近年の消費活動は「安価であれば良い」から「環境保全に協力したい」「Ethicalな企業の品物を買いたい」のような価値観へと変化しはじめています。森林資源の利用についても、効率だけを求める経済活動ではなく「次世代にどのような環境を渡すのか」を重視する方向に進む必要があります。持続的な社会に向かうことに賛同する風を受けて、一層力を入れて取り組みたいと考えています。