SDGs推進室では、法経連携専門教育プログラム(ELS)課題研究「脱炭素社会の地域づくり」の授業と連携をすすめています。この授業は、気候変動対策などを専門とする様々な分野の研究者や、再生可能エネルギーの導入に取り組んでいる企業やNPOの方々に参加していただき、学生との双方向的なワークショップを授業の中で行っていることが特徴で、SDGs推進室とも連携している地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センター所属の研究者が講義のコーディネートを担当されています。毎年授業の最終回では、履修学生がこの授業において学んだことを踏まえて、脱炭素社会構築のための提言を行っており、喜多隆SDGs推進室長が出席して対話の場を設けています。2020年度には、履修学生の一部有志が、神戸大学が2050年にカーボンニュートラルを達成することを目指すため、教職員のみならず、学生が主体的に議論し活動するための場として「神戸大学環境会議」を設置することを提言し、それが実現しました。
 今年度は、授業の一環として、洲本市(淡路島)において竹林の維持管理および竹材の有効利用を考えるための実習が行なわれ、放置竹林がもたらすさまざまな問題や、地元自治体の取組み、竹の活用に取り組む市民プロジェクトなどについて学びました。この実習に参加した一部の有志学生が立ち上げたのが「域学連携推進会」です。「域学連携」は、洲本市が2013年度から積極的に取り組んでいる事業で、これまで京阪神地域を中心とした38の大学から約1,100人の学生を受け入れ、地域住民らとともにまちづくりに取り組まれてきました。放置された竹は、その驚異的な成長力によって、他の樹木の健全な成長の阻害や、竹の浅く広範囲な根による土砂災害の危険性の増大などの問題を引き起こしています。域学連携推進会は、まず放置竹林の問題と、竹の利活用の可能性を多くの学生に知ってもらいたいということを活動の原点としており、9月20日に開催したSDGs推進室の企画によるワークショップ「神戸の未来、社会の未来、ずっと続く地球の未来」への参加を機に結成されました。そして、今回同会が企画したのが学生対象の「竹林伐採体験ツアー」です。六甲祭へも出展してツアーへの参加呼びかけを行い、企画の実現に至りました。

 12月1日、フィールドワークは洲本市安乎町山田原の竹林で行われました。現地でのレクチャーや体験のサポートは、里山資源の循環をめざして竹林の整備や伐採に取り組む「あわじ里山プロジェクト」の辻淳三さんに行っていただきました。大人数での作業により、伐採だけでなく山から下ろす運搬作業も大変スムーズに行うことができ、午前中の作業で伐り出した竹材を利用して、午後はさまざまなアクティビティを体験しました。薪をはじめ即席の椅子や器、食材を焼く串など、限られた時間の中でもあらゆる用途で活用できる竹の魅力を実感しながら、竹材の利用や維持管理について考える盛り沢山のフィールドワークとなりました。

=域学連携推進会代表?黒澤秀司さん(経済学研究科修士1年)のレポート=
 私たちが洲本市の放置竹林問題に関心を抱いたのは、今年度前期のフィールドワークがきっかけでした。現地を訪れる中で、放置竹林問題が地域社会に深刻な影響を及ぼしているにもかかわらず、その存在すら多くの人々に知られていない現状を目の当たりにしました。これを受け、日本中にある放置竹林問題の解決のためには、問題を知ってもらうことが解決の第一歩と考え、私たちは神戸大学域学連携推進会を立ち上げました。以降、SDGsワークショップや学園祭(六甲祭)への出展などを通じて、大学生を中心に問題の認知度向上に取り組んできました。
 今回の竹林伐採体験ツアーは、この活動の一環として、より深い地域課題の理解と竹の活用方法の模索を目的に実施しました。ドイツやベルギー、中国からの留学生を含む13人の学生と4人の教職員が参加し、地元の方々の協力のもと、竹林伐採体験や伐採した竹を用いたアクティビティを行いました。午前中の伐採体験では、10メートルにも及ぶ竹を倒し、運び出す作業を通して、その大変さを身をもって実感しました。昼食では、地元食材を活かした料理を味わい、午後には竹を活用した焚き火でのバウムクーヘン作りや竹灯籠、竹の器作成を楽しみながら、その多様な可能性について学びました。肉体的な作業もあり大変苦労もしましたが、地元の方のアドバイスを聞いたり、参加者同士で教え合ったり、積極的に取り組むことができました。
 このツアーは、放置竹林問題を初めて知る参加者にも楽しみながら課題の現状を理解してもらう良い機会だったと考えております。しかし、これだけで問題が解決するわけではありません。問題を広く知ってもらうだけでなく、解決に向けた次のステップが必要です。伐採作業の負担軽減や伐採した竹の有効活用など、まだ多くの課題が残されています。これらの課題に対処するためには、地域内外の協力者をさらに増やしていく必要性を強く感じました。
 私たちは今回感じたことも踏まえて、今後も継続的に活動を展開し、放置竹林問題の解決に向けて取り組んでいきます。また、この活動を通じて、多くの人々が地域課題に関心を持ち、共に解決へ向けて行動する仲間が増えることを願っています。最後になりましたが、今回のツアーにご協力いただいた地元の皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。これからも、共に歩んでいただければ幸いです。

 


 (SDGs推進室)