神戸大学大学院理学研究科の兵頭龍樹さん (博士後期課程2年) と大槻圭史教授は、土星のFリングとその羊飼衛星が、土星衛星の形成過程の最終段階で、自然な副産物として形成されることを初めて明らかにしました。
この研究成果は8月18日 (日本時間)、Nature Geoscience電子版に掲載されました。
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記者発表資料 (PDF)
土星は太陽系では木星に次いで2番目に大きい惑星で、複数のリングと衛星を持つことで知られています。Fリングは1979年パイオニア11号が発見。幅が数万キロメートルに及ぶ主要リングの外側に位置する、幅数100キロメートルの細いリングで、内側にプロメテウス、外側にパンドラという2つの羊飼衛星を持っています。Fリングと羊飼衛星はその後、探査機ボイジャーやカッシーニにより詳細に観測されていますが、どのように形成されたか、その起源はこれまで明らかになっていませんでした。
兵頭さんと大槻教授らの研究を含む最新の衛星形成理論によると、かつて土星の周りに現在よりも多くの粒子を含むリングがあり、そこから拡散した粒子が集まって衛星が形成されます。この衛星形成過程の最終段階では、小さな衛星が近い軌道に複数形成されます。一方、カッシーニによる観測から、主要リング外縁付近にある小衛星は密度の高い核を持つことが示唆されています。今回、兵頭さんと大槻教授は、国立天文台が所有する計算機等を用いたシミュレーションを実施し、密度の高い核を持つ小衛星同士が衝突して部分的に破壊され、Fリングと羊飼衛星が形成されたことを解明しました。したがって、Fリングとその羊飼衛星は、土星衛星系の形成過程の最終段階で、自然な副産物として形成されたと言えます。
このようなリングと羊飼衛星の形成メカニズムは、同様なリングと羊飼衛星を持つ天王星にも当てはめることができ、今後太陽系内外の衛星系形成を解明する一端となることが期待されます。 兵頭さん(2015年4月よりパリ地球物理研究所で研究留学中)は「今回の研究により、現在の土星リングが衛星系の形成進化過程を反映した姿であることを明らかにすることができた」と述べ、大槻教授は「木星衛星系や火星衛星の探査計画が国内外で進められている中、惑星系形成過程を理解する上で重要な鍵となる衛星系の起源の解明に引き続き取り組んでいきたい」と述べています。
論文情報
- タイトル
- “Saturn’s F ring and shepherd satellites a natural outcome of satellite system formation”
- DOI
- 10.1038/ngeo2508
- 著者
- Ryuki Hyodo & Keiji Ohtsuki
- 掲載誌
- Nature Geoscience