神戸大学大学院医学研究科の森岡一朗特命教授、飯島一誠教授 (小児科学分野) らの研究グループは、未熟児の脳性まひや難聴の原因となる黄疸を、痛みのない方法で皮膚を客観的にモニタリングすることにより予防できる可能性を提唱し、同時に適切な測定部位を明らかにしました。これにより、黄疸のモニタリングの確実性が増し、未熟児の脳性まひや難聴の減少につながることが期待されます。
この研究成果は9月23日 (日本時間)、米国小児医学雑誌「The Journal of Pediatrics」電子版に掲載されました。
未熟児医療技術の発展や新生児集中治療室 (NICU) の整備により、日本での未熟児の救命率は世界一となっています。その一方で、黄疸により未熟児の脳性まひや難聴を残す症例があとをたたず、在胎30週未満の未熟児1000人出生あたり少なくとも2人以上発生していると報告されています。また、生後2週間以上経っても黄疸が増強することが判明し、NICUに入院中長期間にわたってモニタリングする必要性があります。しかし未熟児の黄疸は目視ではわかりにくく、毎日採血してモニタリングすることは現実的に不可能でした。
森岡特命教授らの研究グループは、成熟児の日常診療に用いられている経皮黄疸計に着目。神戸大学、加古川西市民病院、兵庫県立こども病院、姫路赤十字病院、高槻病院のNICUに入院した体重1500グラム未満で出生した85人に対してのべ383回ビリルビン値を測定。その結果、未熟児の胸部あるいは背部がもっとも感度が高く、血中ビリルビン値との誤差が少ないことがわかりました。
未熟児への経皮黄疸計の活用の可能性が提唱されたほか、最適な測定部位が明らかになったことにより、痛みのない方法で長期間にわたり黄疸をモニタリングすることが可能となり、未熟児の脳性まひや難聴の減少につながることが期待されます。森岡特命教授は「小児科医の間でも新生児黄疸はすでに解決された疾患と思われがちですが、未熟児の脳への影響はまだまだ不明なことが多い。未熟児への適切な黄疸管理を提供することにより脳性まひや難聴の後遺症を予防したい」と述べています。
掲載論文
- タイトル
- "Screening for hyperbilirubinemia in Japanese very low birthweight infants using transcutaneous bilirubinometry"
- DOI
- 10.1016/j.jpeds.2015.08.038
- 掲載誌
- The Journal of Pediatrics