神戸大学大学院工学研究科の阪上隆英教授と本州四国連絡高速道路株式会社は、鋼製の橋梁溶接部表面の温度を赤外線カメラで遠隔から非接触に計測し、溶接部のき裂を検出する技術を開発しました。この技術は既に実用化レベルにいたっており、橋梁の経年化による疲労き裂を効率よく高精度に検出することで、橋の維持管理の低コスト化や、重要なインフラの維持管理水準の向上などが期待されます。
これまでの検査方法は、目視により塗装割れやさびを検出し、き裂の存在が疑われる場合には塗装を剥がして磁粉を用いた探傷を行うことが一般的でしたが、検出精度の信頼性の低さや効率の悪さ、高コスト等が問題となっていました。
共同研究チームは、き裂の発生しやすい舗装下の「デッキプレート」部分と「Uリブ」部分の温度に着目。溶接部にき裂があった場合には路面からの熱が「Uリブ」部分に伝わらず明らかな温度の違い(温度ギャップ)が見られます。これを赤外線カメラで計測することで、き裂の有無を非接触で検出するというものです。
また、研究チームは実際に本州四国連絡高速道路の高架橋走行車線直下の溶接部を約10キロメートルにわたり赤外線カメラで撮影。目視では確認されなかった長さ40ミリメートルのき裂の検出に成功し、今回開発した手法の有用性を確認しました。今後はより汎用性を高めるために、自走型の計測装置や、き裂の自動検出装置の開発に取り組む予定です。
阪上教授は、「開発した検査システムは、現状の検査方法を信頼性、精度、効率、コストすべての面で凌駕するもの。疲労き裂の早期検出、経過観察をとおして、維持管理体制に変革を与えうる」と話しています。