兵庫県と神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野の森康子教授らの研究グループは2021年6月から2022年1月にかけて、ファイザー社製必威体育mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech BNT162b2)を3回接種した神戸大学医学部附属病院の医師(40名)を対象として、2回接種後約7ヶ月、および3回目(ブースター)接種後の血清中における必威体育(SARS-CoV-2)オミクロンBA.2株に対する中和抗体を測定しました。
ワクチン接種後約7ヶ月の時点では、ほとんどの接種者がBA.2株に対する中和抗体がない、もしくは非常に低い抗体価しかないけれど、ブースター接種により(接種後約2週間の時点)では、BA.2株に対する中和抗体の有意な上昇が認められました。
これらの結果は、ブースター接種がBA.1株と同様に、BA.2株に対する中和免疫を強く誘導することを示唆しており、このmRNAワクチンの追加免疫がSARS-CoV-2変異体に対する高い交差中和反応を誘導することを裏付けています。
これは、今後BA.1株に置き換わり流行が危惧されるBA.2株の感染拡大を抑える上でブースター接種がBA.1株同様、重要な鍵となりうることを示しています。
この研究成果は2022年4月28日に科学雑誌「The Journal of Infectious Diseases」に掲載されました。
研究の内容
必威体育mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech BNT162b2)の2回接種を完遂した神戸大学病院の医師40人(中央値46歳)を対象として、ワクチン接種後約7ヶ月の時点のBA.2に対する中和抗体価を測定しました。その結果、平均中和抗体価は1.1であり、接種者のほとんどにおいて中和抗体がないか、あるいは非常に低い抗体価であることが示されました。
一方、3回目の接種(ブースター接種)後には、全員がBA.2に対する中和抗体を有しており、平均抗体価も33.7と大きく上昇しました。
今後の展開
この研究で、ワクチンのブースター(3回)接種はBA.1株と同様、BA.2株に対しても中和抗体を強く誘導することが示されました。これはmRNAワクチンの追加免疫がSARS-CoV-2変異株に対する高い交差中和反応を誘導することを裏付けており、今後BA.1株に置き換わり流行が危惧されるBA.2株の感染拡大を抑える上で、鍵であることを示唆しています。
一方で、ブースター接種により獲得された中和抗体の持続に関しては不明であり、新規の変異株が出現する可能性も懸念されます。引き続きCOVID-19の終息に向けて、ワクチン接種者の中和抗体の経時的変化を評価することが必要と考えられます。
謝辞
本研究は兵庫県からの支援を受けて実施されました。
論文情報
- タイトル
- “As well as Omicron BA.1, high neutralizing activity against Omicron BA.2 can be induced by COVID-19 mRNA booster vaccination”
- DOI
- 10.1093/infdis/jiac159
- 著者
- Lidya Handayani Tjan, Koichi Furukawa, Yukiya Kurahashi, Silvia Sutandhio, Mitsuhiro Nishimura, Jun Arii, Yasuko Mori
- 神戸大学大学院医学研究科 附属感染症センター 臨床ウイルス学分野
- 掲載誌
- The Journal of Infectious Diseases