神戸大学大学院医学研究科産科婦人科の寺井義人特命教授らは、国産ロボット支援機器であるhinotoriサージカルロボットシステムを用いた子宮体癌手術を世界で初めて実施した。今後、輸入機器の独占であったロボット支援下手術の世界で、神戸で開発されたhinotoriサージカルロボットシステムによるロボット支援機器を用いた手術が婦人科領域にも広がっていくことが期待される。
ポイント
- 既に保険適用となっている泌尿器科領域に続いて、2022年12月より、婦人科領域、消化器外科領域においても、国産のロボット支援機器であるhinotoriサージカルロボットシステムを用いた手術を、保険適用下で行うことができるようになった。
- 世界で初めて、婦人科領域におけるhinotoriサージカルロボットシステムを用いた子宮体癌の手術を実施した。
研究の背景
ロボット支援下手術は、2000年に米国で認可されたIntuitive Surgical社のda Vinci?というロボットを用いた手術を指し、全世界的にシェアのほとんどを占める状況で今日に至っている。本邦においては2009年にda Vinci?が薬事承認され、2012年に前立腺がんに対し保険適用となり、本格的にロボット支援機器を用いたロボット手術が行われるようになった。産婦人科領域においては、2018年4月の保険改訂で、良性子宮疾患に対する子宮全摘出術および子宮体癌手術に対して、また、2020年4月の保険改訂では、仙骨腟固定術が保険適用となった。しかし、ロボット支援下手術機器は米国で開発されたda Vinci?の独占状態であり、国産ロボット支援機器の開発が期待されていた。
研究の内容
ロボット手術は、手術器具や内視鏡を取り付けた4本のアームが特徴で、医師は患者の体から離れたコックピットで内視鏡の立体画像を確認しながら遠隔でアームを操作して手術を行うことができる。人間の手では届かないような部位に、ロボットアームなら入っていくことができるので、緻密な手術操作が可能となることから、婦人科領域のように骨盤部の奥深い部位での手術操作に適しているとされている。hinotoriサージカルロボットシステムは、従来のda Vinciに比べコンパクトで機能的なロボットアーム、エルゴノミクスデザインに基づく操作端末、高精細な3D画像が特徴で、2020年8月に薬事承認され、9月に保険適用となり、同年12月に神戸大学で初めてhinotoriサージカルロボットシステムを用いた第1症例(前立腺がん)が施行された。そしてこの度、産婦人科領域および消化器外科領域に保険適用が拡大され、12月1日より保険診療の下で実施できるようになり、婦人科領域において、hinotoriサージカルロボットシステムを用いた子宮体癌手術を、世界で初めて神戸大学で実施した。
今後の展開
今後、輸入機器の独占であったロボット支援下手術の世界で、神戸で開発されたhinotoriによるロボット支援機器を用いた手術が婦人科領域にも広がっていくことが期待される。