神戸大学大学院医学研究科 内科学講座循環器内科学分野の髙見充特命講師、福沢公二特命教授、平田健一教授らの研究グループと、株式会社オプティムは、株式会社ZAIKENとの共同研究において、心臓不整脈を有する患者に対する小型のパッチ型心電計郵送による長時間心電図検査と、リアルタイムで送信される心電図をモニタリングしながら行う新たなオンライン診療体制の安全性と有用性を確認し、研究成果として報告しました。

この結果は2023年10月28日に「Circulation Reports」にオンライン掲載されました。

ポイント

  • 心臓不整脈を有する患者診療において、パッチ型小型心電計の患者自宅への郵送を活用
  • 装着した小型心電計からリアルタイム送信される心電図波形モニタリングを見ながら行われるオンライン診療は安全に施行可能
  • 従来の対面診療と比較すると来院必要回数は減少する一方、心電図モニタリング時間は約4倍長く、患者満足度も高いことが示された

研究の背景

オンライン診療は利便性が高いですが、診療中に得られる患者の身体情報、検査所見が限られています。特に心臓不整脈疾患を有する患者において診察時に心電図波形を確認できない事はオンライン診療の大きな欠点でした。

研究の内容

心臓不整脈に対するカテーテル心筋焼灼術 (カテーテルアブレーション) を受けた患者は不整脈の再発の有無の確認のために定期的な外来通院、心電図検査が必要です。今回の研究では、従来の対面診療の外来通院と異なる、小型のパッチ型心電計 (duranta, 株式会社ZAIKEN) を患者の自宅へ郵送し、装着した心電計から送られてくるリアルタイム心電図を確認しながら行うオンライン診療 (オンライン診療ポケットドクター※1, 株式会社オプティム)の安全性と有用性を検証しました (図1)。

図1

カテーテルアブレーション治療を受けた合計38人の患者を、小型心電計郵送?リアルタイム心電図モニタリングを組み合わせたオンライン診療でフォローアップを行いました。カテーテルアブレーション治療後、半年間のフォローアップにおいて従来の対面診療と比較すると、今回の新しいオンライン診療群は来院必要回数が有意に少ない一方、心電図モニタリング時間は約4倍長いという結果でした (図2) 。また、この新しいオンライン診療において半年間で有害事象の発症は認めず、患者満足度は非常に高い事が示されました。

図2

今後の展開

この研究結果は、心電図波形を確認しながら行うオンライン診療が安全に施行可能であり、その有用性や患者満足度が高いことを示しています。外来診療においては対面診療が基本ですが、病状が安定している心臓不整脈疾患の患者において、仕事や学業、感染症のため来院が難しい場合や、遠方で通院負担が大きい場合などには、この新しいオンライン診療が有用である可能性が示唆されました。また、今後在宅医療や不整脈スクリーニングなど様々な場面でも活用できる可能性があります。

(今回の研究では、病状が安定している患者を対象としており、致死的不整脈を有する患者や重症心不全の患者などは登録されていません。)

注釈

※1 オンライン診療ポケットドクター

株式会社オプティムとMRT株式会社 (所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長:小川 智也) との共同サービス。株式会社オプティムの持つリモートマネジメントテクノロジーと、MRT株式会社が培ってきた医療情報および医師、医療機関のネットワークを組み合わせ、医療を必要としている人々と遠隔地にいる医療の専門家をつなぐサービス。オンライン診療における診療予約から決済までの一連の流れを、スマートフォン?タブレット上で実現できる。

謝辞

本研究は神戸大学大学院医学研究科 内科学講座循環器内科学分野が科学研究費補助金 (22K08183) を受けて遂行しました。

論文情報

タイトル

Telehealth Follow-up Using a Real-Time Electrocardiogram Device Improves Electrocardiogram Monitoring Duration and Patient Satisfaction After Catheter Ablation

DOI

10.1253/circrep.CR-23-0083

著者

Mitsuru Takami, Koji Fukuzawa, Kunihiko Kiuchi, Hiroyuki Takahara, Kimitake Imamura, Toshihiro Nakamura, Yusuke Sonoda, Kazutaka Nakasone, Kyoko Yamamoto, Yuya Suzuki, Kenichi Tani, Hidehiro Iwai, Yusuke Nakanishi, Mitsuhiko Shoda, Atsushi Murakami, Shogo Yonehara, Ken-ichi Hirata

掲載誌

Circulation Reports 2023; 11:415-423

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研究者

SDGs

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