カーブジェン株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:中島正和)が開発を行う「細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェアBiTTE?-Urine」(読み:ビッテ ユリン)が、管理医療機器プログラムとして承認を取得しました。

BiTTE?-Urineは、AI画像解析技術を活用し、尿のグラム染色画像から菌種推定を支援するソフトウェアであり、地域のアンチバイオグラムとの連携も可能です。

本製品は、カーブジェン株式会社、国立国際医療研究センター?国際感染症センター(NCGM)の山元佳 医師ならびに神戸大学都市安全研究センター?医学部附属病院検査部の大路剛准教授らとの共同研究により、開発および実証実験を行ってまいりました。

※本製品の開発にあたっては、一部、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医工連携イノベーション推進事業(課題名:薬剤耐性の抑制に資する菌種推定と抗菌薬適正使用支援システムの開発)」及び「医療機器開発推進研究事業(課題名:画像認識AIによる細菌感染症の菌種分類精度向上と抗菌薬適正使用に関する臨床研究)」の支援をうけました。

開発背景

世界的課題である「薬剤耐性(AMR)問題」への対応

20世紀に初めての抗菌薬が開発され、急速に世の中に抗菌薬が普及するとともに、抗菌薬への耐性を獲得し、その効果を得にくくなる「薬剤耐性菌」が現れました。なかでも広範あるいは完全な薬剤耐性を持つと考えられる細菌は「スーパーバグ(superbugs)」と呼ばれ、世界的な課題としても注目されています。実際、2019年には世界で約100万人以上が薬剤耐性菌に関連して亡くなったと見積もられており、更に2050年には年間の死者数は1,000万人にも及ぶと推定されています。

また、既存の抗菌薬が効き難くなるため「薬剤耐性菌」の治療は難しく、多くの薬剤処方量と代替薬が必要となります。さらには、手術時や抗がん剤治療等で免疫が低下したときに感染した場合には致命的となるなど、様々な医療課題を引き起こす原因ともなっています。これが「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)問題」です。

薬剤耐性菌発生の抑止には、「感染症の原因を正しく診断し、抗菌薬の適正投与による治療を行う」ことが重要です。「BiTTE?-Urine」は、グラム染色像の解析を自動化し、微生物の推定を支援することで、診断の迅速化と精度向上に寄与します。

BiTTE?-Urineの概要

本ソフトウェアは、尿検体のグラム染色像に対するAI画像解析技術を利用した菌種推定、ならびにアンチバイオグラムと連携した適正抗菌薬の選定を支援する仕組みです。

菌種推定については、グラム染色画像と培養検査による菌種確定結果を学習した画像認識AIモデルを構築し、その推論結果を用います。 グラム染色画像は、光学顕微鏡にアタッチメントを介して、スマートフォンを接眼レンズ部分に取付け、スマートフォンのカメラで撮影します。薬剤感受性試験の結果を統計的データとして用いるアンチバイオグラムによりエビデンスデータに基づき、抗菌薬適正使用を支援します。

BiTTE?-Urineの特徴

  • 菌種推定支援: 7種の菌形態(グラム陽性桿菌、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、酵母様真菌、複数菌、菌体なし、その他)に対して、感染症専門医療職に対して非劣性となる約95%の精度で分類します。
  • 迅速な解析:約10秒で菌種推定結果を表示し、微生物専門外の医療従事者の判読を支援します。
  • 抗菌薬候補の情報提供:地域や院内の薬剤感受性データと連携し、推定菌種に対する抗菌薬候補一覧を表示します。併せて、スペクトラムスコアやWHOのAWaRe分類の情報も提供します。

ユースケース

  • 休日?夜間帯に微生物専門外の医師?技師の判読支援
  • 救急に従事される医師の判読支援
  • 研修医の判読スキル向上の教育ツール

研究者コメント

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症は感染症の原因となることが多い臓器の一つです。尿はこの原因がわかる非常に重要な検体です。この原因菌の推定にグラム染色が有用ですが、専門家しか読影できないことが問題でした。 
このBiTTE-Urineの開発は、専門家でなくとも菌種推定を可能にし、救急?総合診療だけでなく、病院検査部でも人手の少ない夜間などにおいても非常に有用だと考えています。また、AWaRe分類も提供できることは抗菌薬適正使用にも役立ちます。今後さらなる人出不足が予想される医療現場の助けになると確信しています。

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