海上コンテナ輸送の発明は国際輸送の分野においては産業革命に匹敵する大革命であった。登場から50年、原材料や機械部品から最終消費財まで、多頻度小口輸送が求められるあらゆる商品の輸送で利用されるに至り、 国際貿易において必要不可欠の輸送手段となっている。海上コンテナ輸送は、国際複合一貫輸送とも呼ばれ、輸送される貨物をISO規格のコンテナに詰めることで、船、トラック、鉄道など複数の輸送機関を用いたドアトゥドアの国際輸送をスムーズに行うシステムである。本システムはコンテナ、船、港湾 (コンテナターミナル)、河川航行船 (バージ)、鉄道、トラックなど、多くの高度に機械化されたサブシステムから成り立っている。さらにこれらサブシステムを効率的に運用し、また全体システムを円滑に機能させるために、様々な設備計画やオペレーション計画が必要とされている。
本書では上記各サブシステムの研究者が執筆陣を構成し、それぞれのハード (技術的課題) とソフト (計画的課題) の両側面、さらには海上コンテナ輸送の経済性を研究するために必要な貿易データや経済分析手法までを広範かつ詳細に解説している。これは総論に終始しがちな既往の類書にはない本書の大きな特長である。
本書は単なる国際海上コンテナ輸送の紹介ではなく、技術的にも運用的にも今後ますます進化する国際海上コンテナ輸送の研究への端緒を提供する総合的な解説書であり、学部ならびに大学院学生向けの教科書ならびに参考図書として利用できるものである。
大学院海事科学研究科教授?今井昭夫