本書は、 Human Resource Management (人的資源管理) 論の数あるテキストブックのなかで、英国の大学において最もよく採用されているテキストブックの邦訳版です。分厚いテキストブックですが、人的資源管理の主要論点の全てが網羅されており、初めから順に読み進めていけば基礎から応用まで自然にステップアップできるよう、さまざまな工夫が凝らされています。
一例を挙げると、要点をまとめた「本章の概要」やケースを紹介した「ケース?スタディ」?「人的資源管理の実際」のコーナー以外に、「考えてみよう」、「深く学習するために」、「ウェブサイトへのリンク」、「人的資源管理を実践してみよう」などのコーナーが随所に挿入され、多面的な学習を各自で促進できるように工夫されています。
訳語も平易で、意味がすぐ通じるようにわかりやすく翻訳されています。個々のトピックスについて、単にその表層を知るだけではなく、多角的で深層レベルでの理解が目指されているのが本書の最大の特徴です。
米国や日本とは趣を異にした英国流の人的資源管理論のスタンダードを知りたい諸氏に、是非ご一読をお奨めします。原著と照らし合わせながら読むことで、英語文献をどのように邦訳すればよいかの勉強にもなります。
また、研究論文の執筆において必須プロセスともいうべき「深く考えてみること」、「新たな視点で物事を捉え直してみること」が、一体どういう意味で具体的にどんな作業をすればいいのか知りたい、とお考えの一般大学院生?MBA生の皆さんには、うってつけの一冊です。
大学院経営学研究科教授?上林憲雄