本書は、社会調査の考え方と進め方についてまとめたものです。調査ばやりとも言われる今日、さまざまな領域で多種多様な社会調査が行われています。そして、それらの結果は、テレビや新聞、インターネットを通じて日々報じられています。私たちは、それらの結果から多くの知識を得たり、意識的あるいは無意識的にそれらの結果に依拠して物事を判断していることが少なくありません。社会調査を抜きにしては何ごとも語れない時代であるとも言えます。こうした時代には、調査する側には適切な方法で調査をする責任がますます強く求められるのは当然のことですが、もう一方で、その結果を知らされる側には、その調査が適切な方法で行われた調査であるか否かを見抜き、調査結果に惑わされたり騙されないようにすることが求められます。その意味では、社会調査法の基礎を身につけることは、いまや現代人に求められる教養の一つであると私は思っています。
2003年に社会調査士資格認定機構 (現?一般社団法人社会調査協会) が発足し、各大学で科学的な社会調査を担える専門家?社会調査士?を育成するようになったことは、まさに時代の反映です。本書の内容は、社会調査協会によって認定された授業科目の一つとして私が発達科学部人間行動学科で担当している社会調査法の授業を基にしています。これまでの講義や演習、実習、個別指導の経験や私自身の調査経験から、社会調査を実施するときや社会調査の結果に基づいた論文や報告書、報道に接するときにぜひとも留意してほしい事項を平易に説明しています。
大学院人間発達環境学研究科教授?小田利勝