本書は2008年5月に出版した『教育から職業へのトランジション—若者の就労と進路職業選択の教育社会学—』(東信堂、2008年5月) の続編です。また本書は、編者を研究代表者とする平成19~20年度科学研究費補助金 (基盤研究 (C)) の研究成果を中心にまとめたもので、その第三弾でもあります (第二弾は原?山内著『「使い捨てられる若者たち」は格差社会の象徴か —低賃金で働き続ける若者たちの学力と構造—』2009年5月)。若者の就労を巡る問題はいまや日本だけのものではなく、中国、韓国、ヨーロッパなどでも広く見られます。なぜ同時多発的に起こっているのでしょうか。また、過去にもずっとこの種の問題はありましたが、現在の問題は過去と大きく異なる点が一つあります。それは高学歴者の失業がクローズアップされている点です。教育の不足に起因するスキルの不足が失業の原因ではないというわけです。このような場合、どのような方策が可能なのでしょうか。
本書は前著の続編として、沖縄県、イギリス、エジプト、北欧諸国、オーストラリアの取り組みを検討し、また、日本に在住する留学生の就労問題をも扱って、上述の疑問に取り組んでおります。お読みいただいた方におかれましては、どうか忌憚のないご意見、ご批判をお寄せください。
大学教育推進機構/大学院国際協力研究科教授?山内乾史