保育者の重要性が指摘されています。その背景には、子どもの人間関係形成能力、体力、学力の低下、さらには、科学の進歩や多元文化社会等があります。これらへの対応が、保育者にも期待されています。保育者には、子どもの今を洞察し応答的に対する力量と、子どもの育ちへの見通しをたてその実現のために能動的に保育の計画?実践?評価する力量、さらには、評価に基づきさらに子ども理解を深めさらに実践創りを繰り返していく力量が望まれています。
これらを踏まえて、本書では、保育実践力を培うことを大前提に、保育現場におけるカリキュラムとはどのようなものか、どのように作成し、どのような課題があるのかを概説しました。また、本書では、保育現場から提供していただいた具体的な業務の記録がたくさん紹介されています。人と接する専門職である保育者が、子どもを洞察し、実践の計画を立て、実践の後の十分な省察と評価を繰り返し、更に力量を高める方法も提案しています。保育実践にはマニュアルはなく、ガイドラインしかありません。保育の現場は、個別性が高くライブで展開し、不確定要素の多い大変難しいものです。しかしそれだからこそ、保育を通じて常に発見があり、子どもの発達のみならず自らの成長も図れる深いやりがいがそこにあるのです。本著が、その保育実践を創る力の向上を図る一助となることを願っています。
人間発達環境学研究科准教授?北野幸子