BRICsという言葉は、ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を並べただけものであるが、ゴールドマン?サックス社の2003年のレポート "Dreaming With BRICs: The Path to 2050" で一躍有名になった。その中で、中国は2040年頃にアメリカを抜き世界一の、インドは2030年過ぎに日本を抜きアメリカに次ぐ第三の経済大国になり、2050年にはBRICs経済はG6経済を凌ぐだろう、といった大胆な予測が行われ、BRICsは世界経済のキーワードとなった。
国土面積では、ロシア1位、中国4位、ブラジル5位、インド7位、人口では、中国1位、インド2位、ブラジル5位、ロシア9位であり、国土面積で世界の3割、人口で4割を占める。したがって、4カ国が経済成長を果たせば、巨大な新興マーケットが誕生するのである。
その他にも、いくつかの共通点が存在する。第1に、4カ国は豊かな天然資源に恵まれている。ロシアは世界で最大の石油?天然ガス生産国であり、ブラジルは石炭、鉄鉱石に恵まれ、中国、インドにも豊富な鉱物資源が存在する。
第2に、4カ国の経済成長は、90年代からの (中国は78年からの) 経済自由化政策が大きな推進力となっている。とくに中国とロシアの経済自由化は社会主義からの体制転換を伴うものであり、インドでも長らく社会主義経済を取り入れた経済運営が行われてきた。
本書は、これらBRICs4カ国の特徴を、工業、農業、貿易、直接投資といった経済的側面や環境、教育などの社会的側面、そして日本との関係を含む29の項目について、図表と解説を利用して分かりやすく示すことを狙いとしている。
経済学研究科教授?吉井昌彦