前世紀末から今世紀初頭にかけて行われた司法制度改革の一環として、2004年に行政事件訴訟法が改正されました。この法律は、主として国民 (私人) が行政を相手取って、違法な行政活動の是正と、それによって侵害された権利の救済を求める行政訴訟の基本的ルールを定めたものです。行政訴訟は、日本国憲法32条が保障する “裁判を受ける権利” を実効的に実現し、法治主義の原則を貫徹するためになくてはならない制度ですが、長らく機能不全に陥っているという批判を受け続けており、2004年の改正によって裁判による行政のコントロールを充実させるための新しい制度がいくつか導入されました。
本書は、行政訴訟の中心的存在である抗告訴訟という訴訟類型が、行政活動の違法性を確認するとともに、それに応じた是正措置 (救済) を付与するシステム (違法是正訴訟) であるという見方を前面に押し出して、そうした訴訟制度のなかで判決の効力がどのような役割を担っているかを分析したものです。私が大学院に入って初めて書いた修士論文以来追究してきたテーマをまとめた理論的な研究ですが、2004年の改正によって多様化した抗告訴訟のメニューを整合的に解釈するための視点を提示することも試みています。
主な読者としては、行政法の研究者や行政訴訟に携わる実務家を念頭に置いていますが、法学部や法科大学院で行政法と民事訴訟法の勉強を終えた方にも手に取っていただけると幸いです。
法学研究科准教授?興津征雄