新訂版 移民?教育?社会変動

新訂版 移民?教育?社会変動

ヨーロッパとオーストラリアの移民問題と教育政策

移民国家として長い経験をもつヨーロッパの6カ国とオーストラリアについて、移民の子どもへのアイデンティティ教育、市民権教育、言語教育を中心に教育政策の課題を考察する。

  • 著者
  • ジークリット?ルヒテンベルク 編, 山内乾史 監訳
  • 出版年月
  • 2010年08月
  • ISBN
  • 9784750332635

本書は2008年1月に出版した訳書の改訂新版です。訳文を全面的に見直し、事情の変化が大きい点に関しては新たに注を付しました。今日、イギリスやフランスなどで絶え間なく起こる移民の暴動、あるいは移民排斥を求める極右団体の台頭、スカーフ問題、ターバン問題など、今後のヨーロッパ社会のあり方を考えて行くには移民をいかに位置づけるかについて考察することが欠かせなくなっております。本書は、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン、オランダ、ギリシア各国における近年の移民の急激な増大を受けて、教育や社会がどのように変化したのかを検討し、さらにそのような状況を受けて逆に教育には何ができるのかを考察したものです。古典的な移民国家としてオーストラリアにも言及し分析?比較しています。第1章から第3章までは理論編といったところで、近年の移民の急激な増大の実態と、グローバリズム、グローカリズム、トランスナショナリズム等の概念の理論的検討を行い、第4章以下では各国の事例分析を行っています。後書きにも書きましたとおり、今、ヨーロッパ移民に関しては、EU加盟国の拡大とイスラム文明の流入が二つの大きな争点となっています。この二つがクロスするのが近い将来のトルコ加盟をめぐる問題でしょう。

当然、こういう問題は日本にとって無縁なものではなく、我々にとっても参照すべき点は多くあるように思われます。本書はキレイゴトに終始する二流、三流の一部移民論とは一線を画し、一流の執筆陣が現実的な提案をしているところに魅力があるように思われます。多くの方々にお読み頂ければ幸いです。

大学教育推進機構/大学院国際協力研究科教授?山内乾史


目次

  • 第1章 イントロダクション
  • 第2章 トランスナショナリズムと移住—社会科学の新しい課題と教育
  • 第3章 (新たな形態の)移住 —教育への挑戦
  • 第4章 学校における集合的連帯と社会的アイデンティティの構築 —統一後の西ベルリンにおける移民の若者に関する事例研究
  • 第5章 イギリスにおける移民とマイノリティの教育
  • 第6章 エスニック化した学校の発見 —フランスの事例
  • 第7章 ヨーロッパの新しい移住 —教育の変化と挑戦?ギリシアからのパースペクティブ
  • 第8章 家庭と学校での移民マイノリティ言語に関するヨーロピアン?パースペクティブ
  • 第9章 多言語国家、多文化国家としてのスウェーデン —学校と教育への影響
  • 第10章 オーストラリア —多文化主義、グローバリゼーション、トランスナショナリズムへの対応に見る教育の変革と課題