本書は、資生堂の『花椿』誌の好評連載中のエッセイ「美術史ノワール」をまとめたものである。基本的にそのときどきの興味や常日頃思っていることを綴った美術漫談であり、大学やカルチャースクールでいつも話している内容の一端である。いずれも私の興味を押し出したものであるが、生と死、聖と俗、言葉とイメージ、芸術家と人格、性と食、権力と展示、純粋美術と民衆美術など、美術史の普遍的なテーマにもふれているのではないかと思っている。美術史は画家の伝記の連なりではなく、美術作品が人の心や社会にどのように作用したかの軌跡であるからである。以前あちこちに書いた文章や別のいくつかの拙著と部分的に重なる内容もあることをご容赦願いたい。
「指名手配写真を美術館に飾ったら、それはアート? 美術史の教科書には載っていない異色の掌編20話」(オビより)
必威体育研究科准教授?宮下規久朗