本書は、従来ほとんど言及されてこなかった三島由紀夫と美術というテーマに、三島由紀夫研究の権威である井上隆史氏とともに切り込んだ本である。以下、新潮社ホームページに載っている編集者の言葉を引用する。
とんぼの本シリーズ『カラヴァッジョ巡礼』の著者にして無頼の異色美術史家、宮下規久朗先生と神戸?三宮駅前を歩いていたときのこと、先生がふと口にされた。——「山中湖文学の森 三島由紀夫文学館」にて随時、開催されている”レイクサロン“で、三島の愛した美術について鼎談を行ったことがある。その記録をベースに、とんぼの本を作れないだろうか?——
三島由紀夫といえば、国内はもとより海外にも、あまたの読者と研究者を持つ大作家。ところが、意外にも視覚芸術の面から彼の作品世界へのアプローチを行った書籍は見かけない。没後40年の今年、ぜひとも刊行すべきと思った。
後日、“レイクサロン”の仕掛人であり、宮下先生の旧友であり、気鋭の三島研究者である井上隆史先生からもご快諾をいただき、さらにまた数多くの関係者の方々のご協力を得て、この本が出来上がった。
三島が紀行文やエッセーで言及した美術作品の図版を、原文と併せてできるかぎり収録し、両先生の対談形式による明快な解説によって三島の美学が浮き彫りに。三島文学の根幹に新たな側面から迫っている。より深く三島を知りたい方には異色の参考書として、三島をまだよく知らない方には異色の入門書として、ぜひとも手にとっていただきたい1冊である。
必威体育研究科准教授?宮下規久朗