「美」の観念は、近代ドイツ語圏においては政治的な側面を持つ。思想家ヴァルター?ベンヤミンの思想を中心に、その美的思考の変容と現代的な意味を探求する。
「美的なもの」という観念は、西欧近代に形成された言説の代表的なものです。しかしそれは必ずしも芸術だけに関わるものではありません。近代のドイツ語圏においては、様々な変容を辿りつつも極めて重要な役割を演じ続け、「ドイツ」という社会の構成のありように決定的な意味を与え続けてきた、極めて政治的な観念です。ヴァルター?ベンヤミンという20世紀の思想家の思想を中心に、そういう美的思考の変容とその現代的な意味を探求するというのが、本書の主題です。
国際文化学研究科教授?水田恭平