コーパス (電子化された大規模言語データベース) の分析を基盤とするコーパス言語学は、20世紀後半以降の言語研究に大きな影響を及ぼしている。コーパス研究は、はじめに英語において盛んになったが、2011年に日本語初の大規模コーパスが構築?公開されるなど、日本語のコーパス研究環境も急速に整備されてきている。本書は、こうした背景をふまえ、英語?日本語の両方を視野に入れながら、コーパス言語学の最新の状況について整理?概観した研究書である。英語コーパス研究と日本語コーパス研究は、多くの点で異なる学問的背景を持ち、これまで相互の接続は必ずしも十分ではなかった。本書は、コーパスという切り口によって、英語?日本語をはじめとした多言語の対照的研究の可能性を開くユニークな書物と言える。
本書は、ひつじ書房の言語学入門書シリーズの中の1冊として刊行された。全10章構成 (288ページ) で、序章に続く第1部 (第2~6章) では、「コーパス研究の基礎」として、コーパスの定義、コーパスの種別、コーパス作成法、コーパス検索法、コーパス頻度処理などの問題を扱う。また、第2部 (第7~10章) では、「コーパス研究の展開」として、コーパスに基づく語彙?語法?文法?学習者研究を扱う。巻末には詳細な索引と参考文献リストを付す。言語研究?言語教育研究に興味を持つ多くの皆さんにお読みいただければ幸いである。
国際コミュニケーションセンター/国際文化学研究科 准教授?石川慎一郎