日本が欧米列強に仲間入りした日露戦争から、二つの大戦、朝鮮戦争、冷戦、ベトナム戦争、対テロ戦争……と、日米はさまざまな戦争と向き合ってきた。協調?摩擦?対立?そして深化──日米関係を規定する論理を解き明かす本書は、いくつかのオリジナリティを有している。
たとえば、日米関係を単純な二国間の政治外交関係としてとらえ、それに沿った形での通史を描いているのではない点である。すなわち、本書の独自性は「戦争」という国際政治上における重大事件に焦点を当て、それを分析の基本枠組みとしながら日米関係を検証したことにある。あえて両国が全面的に衝突した「太平洋戦争」を考察の対象から外し、日米両国が直接対峙しなかった戦争あるいは対立を取り上げていることにも特色がある。
また、さらなる独自性として、本書は歴史家 (外交史家) と国際関係論の専門家との共同作業によって成り立っている点が挙げられる。21世紀の戦争や対立は<現在>にあまりにも近すぎるため、資料等の制約から実証主義を重んじる歴史家からすれば学問として扱うのはきわめて困難である。他方、現在の事象の検証?分析も欠かせない国際関係論の専門家は、最近の事例までもを研究対象としており、直近の出来事も学問的に解釈する。両者の強みを活かそうという試みが本書である。
本書は、「戦争の歴史」から読み解く本格的な日米関係通史であり、日米関係はもとより、広く日本の対外関係に関心のある方々に広く読んでいただけることを願っている。
なお、本書には、編者 (簑原俊洋) のほか、法学研究科の栗栖薫子教授、多湖淳准教授も執筆を行っている。
法学研究科?教授 簑原俊洋