アフリカにおける民族問題を、歴史、法律、政治などさまざまな側面から検討。民族多様性と経済活動との関連について、複数の専門分野からアプローチする。
民族の多様性は、アフリカの経済成長を阻害する要因として捉えられがちです。データに基づく定量的なエビデンスが乏しい中、民族の多様性はアフリカにおける市場経済に影響を与えるのか?という疑問は、経済学、政治学、歴史学、人類学、法学など、多様な学問分野の垣根を超えて多くの研究者の注目を集めてきました。
この疑問への答えを求めて、JICA研究所は、2008年10月の設立当初に研究プロジェクト「アフリカにおける民族多様性と経済的不安定」を立ち上げ、重点研究プロジェクトの一つとして研究を進めてきました。本プロジェクトは、神戸大学経済経営研究所との共同研究として、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北アメリカの国際的に著名な研究者の協力を得て行ったものです。
このプロジェクトの成果である本書では、民族の多様性と経済成長は相互依存の関係にあり、開発経済学で一般的に見なされているような単純な一方向の因果関係として捉えるべきではないと主張しています。また、必ずしも民族の違いが対立を生んでいるわけではなく、民族間の不平等が大きい場合にのみ、対立の原因として着目されると述べています。
本研究プロジェクトの成果物として、『How Can Africa Flourish with Ethnic Diversity? Synopsis of the Fifth Kobe University/JICA Conference on Ethnic Diversity and Economic Instability in Africa』(2013年) も発刊されています。
国際協力機構(JICA) 緒方貞子平和開発研究所 書籍紹介より