この本は、「シマ(生まれジマ)」と呼ばれる、沖縄の集落での日常の生活実践がもつ教育的な意味を、ライフヒストリーないしはナラティヴという方法を用い、シマ社会に内在する観点から一つの解釈として示そうとしている。沖縄の集落では、字公民館(区事務所)を拠点にして、伝統的な年中行事(神行事)や生年合同祝い、学事奨励会、区行政の集まり、スポーツ行事などの、さまざまな活動が展開している。本書が目指したのは、これらの活動がもつ「学び」としての意味の解明であり、教育論的には学校型の教育モデルを克服しようとする試みに属する。本書ではシマ社会をひとつの小宇宙と捉え、そこにある意味の違いに注目しながら、観点を字公民館→地域課題の変遷(名護市辺野古区)→字誌づくり→村踊り→人生の出来事へと移行、深化させながら、それぞれがもつ「学び」としての意味を検討している。
人間発達環境学研究科?教授 末本誠