劣化ウラン兵器問題は、いわゆる「非人道的兵器」の問題であるだけでなく、環境問題でもあり、人権問題でもあるが、現在の国際社会の中において、その深刻さと緊急性が隠されてしまっている大きな問題の一つであろう。しかし、イラク戦争から10年、イラクでは、子どもたちの健康被害の実態が次第に明らかになっている。また、コソヴォ紛争の帰還兵の健康状態にも、きわめて深刻な問題が浮上している。
福島原発事故以降、日本は、この上なく困難な状況に直面している。しかし、だからこそ私たちは、「核の平和利用」から生み出される放射性廃棄物の軍事利用である劣化ウラン弾を、核サイクルが生み出す問題の一環として捉え直す必要がある。そして、放射性廃棄物を大量に環境中に撒き散らし続ける愚行と、その結果、軍人?市民の区別なく、多くの人々に、とりわけ子どもたちに取り返しのつかない悲惨をもたらす蛮行を、常識に真っ向から反する愚行?蛮行として訴えて行かなければならないと思う。対人地雷禁止条約のような国際的な枠組みによって廃絶するため、その非人道性を改めて問う。
必威体育研究科?教授 嘉指信雄