ヨーロッパという秩序

ヨーロッパという秩序

シリーズ激動期のEU

ヨーロッパ統合により形成された法秩序。構成国との間の権限配分はどのようにEUに移譲されるのか。法と政治の視点から考える。

  • 著者
  • 濵本正太郎, 興津征雄 編著
  • 出版年月
  • 2013年04月
  • ISBN
  • 9784326546398

本シリーズ3巻は、EU Institute in Japan, Kansai (EUIJ関西) の過去8年間の共同研究の成果である。EUIJ関西は、EU (欧州連合) に関する教育?学術研究の促進、広報活動の推進や情報発信を通して日?EU関係の強化に貢献するため、2005年4月1日に、欧州委員会の資金援助により神戸大学?関西学院大学?大阪大学からなるコンソーシアムとして設立された。2009年4月1日には、京都大学経済研究所および関西大学を協定校として組織を拡大して第2期を開始し、2013年4月1日には、和歌山大学、香川大学、奈良大女子大学を協定校としてさらに組織を拡大して第3期を開始した。

EUIJ関西の活動期は、EUにとって激動の時代であったといえよう。まず拡大においては、2000年代に旧社会主義国であった中東欧諸国など12ヶ国が加盟し、それまでの15カ国から一挙に28カ国に加盟国数が増えた。

しかし、深化において変化はさらに著しい。2009年12月にリスボン条約が発効し、EUは新たな深化の時代に入ったものの、それに相前後して起きた欧州ソブリン危機は、ユーロ圏の分裂の可能性など深刻な問題を提起してきた。われわれは、60年の深化の経験を通して、さらに統合を強めながら、EUはユーロ危機を克服するものと信じているが、予断は許さない状況である。

本書は、EUIJ関西に関係する経済、経営、法?政治グループの研究者が、これらのEUの複雑な問題を解き明かそうとする一つの試みである。EUに関心を持つさまざまな方々に本書が有益である。


目次

  • 第1部 ヨーロッパ法秩序の把握
    • 第1章 憲法多元主義――ヨーロッパ法秩序をめぐる議論の構図
    • 第2章 権限移譲――EU投資法の形成
    • 第3章 EU社会法の柔軟性と正当性――非典型雇用差別禁止の法規制を素材として
  • 第2部 「多様性における統一」の実際
    • 第4章 公正な裁判と論告担当官――ヨーロッパ人権条約6条に試されるフランス行政法
    • 第5章 陪審評決の理由附記義務――主観的判断と客観的判断の相克
    • 第6章 ヨーロッパ人権条約における婚姻に対する権利の一断面――近親婚に関する判決を素材とした条約規範とフランス民法規範の相克
    • 第7章 EU統合下における地域と国家主権の位相