1980年代に一世を風靡した日本型システムは、長引く不況による日本企業の収益低迷に伴い、ポジティブな文脈において語られることは昨今では少なくなった。代わって韓国や台湾など新興国から、日本企業が逆に学ばなければならない状況であると喧伝されている。
本書は、こうした現状認識を基礎に置き、日本的経営の全盛時代から比較して日本企業の人的資源管理(HRM)の現状がどうなっているか、それを支える制度や理論、実践が、現在どの程度「進化」しつつあるかについて、HRMの各側面に焦点を当てながら、その全貌を明らかにしようとするものである。とりわけ、グローバリゼーションの進展や市場主義の考え方が、既存の日本型人的資源管理システムをどのように変容させているかが、本書全体を貫く分析の基軸となっている。
本書は、現在、内外の大学で教育研究に従事している第一線のHRM研究者22名によって執筆されており、全執筆者共通の指導教授である奥林康司先生(大阪国際大学教授?副学長、神戸大学名誉教授)の古稀を祝して上梓されたものである。HRMの基礎を概説した『入門 人的資源管理(第2版)』の応用編として、HRM各領域の最新理論と実践のフロンティアをお知りになりたい各位に、是非ご一読を頂ければ幸いである。
経営学研究科?教授 上林憲雄