本書の初版を2001年12月に刊行しました。幸い、多くの読者を得て、2007年に第2版、2011年に第3版を刊行し、今回、第4版を刊行しました。
初版時に、私は次のように「はしがき」に書きましたが、版を重ねても、本書のコンセプトは変わっていません。
本書を執筆する上で気をつけた点は、二つあります。第一に、初めて経済学を勉強するという初学者にマクロ経済学がどんな学問かを知ってもらえるようにすることです。そのため、伝統的なマクロ経済学の学問体系にそって議論を展開することにしました。
第二に、新聞やテレビで、日常的に交わされている経済政策論争の内容がわかるようにしたいと言うことです。ある程度わかるようになると、経済記事を読んだり、テレビの経済番組を見たりするのが楽しみになります。そしてそのことがますます知識を深め、もっと知りたいという意欲を生み出してくるはずです。本書がそうした第一歩になることを目指しました。
そうした目標の下で、具体的な課題は、どのテーマをどの程度、説明するかと言うことです。まず、量で読者を圧倒しないことを第一に考え、半期の講義でも十分消化できる分量を目安にしました。ただし、コンパクトにしたまま話題を豊富にすると、一つあたりの説明が非常に簡単になってしまいます。ある程度の知識があると簡潔な説明で事足りるのですが、初めて経済学を学ぶ読者の皆さんには不親切になってしまいそうです。そこで、最低限、わかってもらいたいことのみを説明するようにしました。
よく同僚や研究者仲間との間で、初級のマクロ経済学の講義でどこまで学生がわかってくれたかということが話題にのぼりますが、「なんとかIS-LMモデルまで」という答えが多いように感じています。たしかに、現代のマクロ経済学の発展は、IS-LMモデルを大きく超えているのは事実ですが、IS-LMモデルを最低限知らなければ、現実のマクロ経済の状況や経済政策を理解することは難しいでしょう。また、専門課程でのマクロ経済学の授業だけでなく、マクロ経済学の基礎を前提にして行われる専門の講義(金融論など)にも、IS-LMモデルの知識があれば十分対応できるはずです。
そこで、初心者向けのマクロ経済学のテキストとして、本書では、IS-LMモデルに焦点を絞って執筆しました。本書は、普通のマクロ経済学のテキストに比べると、かなり丁寧にIS-LMモデルの基本構造を説明していますので、「なんとかIS-LMモデルまで」という要請に十分に応えることができていると思います。
第4版では、統計データのアップデートを行い、それに伴い解説を改訂しました。また、今回、各章に発展的な話題を追加してみました。
少しでもわかりやすいマクロ経済学のテキストになるように,今後も工夫していきたいと思っています。
経済経営研究所?教授 家森 信善