現代国際法が、いかにして国家のおかれた個別の状況を拾いあげ、形式的普遍的な国際法の適用による実質的な国家間の不平等に対処するかなどを考察した論文集。
本書は、本学大学院国際協力研究科の柴田明穂教授(国際法)と元神戸大学教員2名が編纂した最新の英文国際法論文集であり、共通の恩師、位田隆一京大名誉教授のご退職を記念して発刊されました。
形式的に平等と観念される国家を前提とする伝統的国際法では、国家のおかれた具体的な状況が捨象され、国際法の形式的普遍的適用は実際には国家間における実質的な不平等をもたらすことがあります。この喫緊の課題に国際法がいかに対処するかが国際法システムの実効性を左右するのですが、ニヒリズム的な相対主義に陥らずに、いかに国際法理論を柔軟に再構成するかが問われています。この論文集は、位田隆一教授が提起した以上の課題に、現代国際法がいかに対処しているかにつき、国際法が適用される具体的な文脈、国際法の実効性、そしてそれが達成すべき目的に焦点を当てて考察しています。本書は、第1部「具体的状況:普遍の脱構築」、第2部「実効性:法の形式性と現実の可変性」、第3部「法形成:グローバル化する国際共同体に追いつこうとする法」という3つのサブテーマに位置づけられた12本の論文で構成されており、その考察対象は、国際経済法、国際刑事法、国際環境法、国際責任法、国際機構法、そして国際法形成過程論に及んでいます。加えて、位田教授の主要業績一覧も附録しています。
世界の国際法学界を牽引する若手?中堅国際法研究者による力作揃いです。是非、ご一読願います。
国際協力研究科?教授 柴田明穂