アカウンタビリティは、代表制民主主義の根幹をなす重要な概念であるにも関わらず、政治学分野における研究は発展途上にあるといえます。とりわけ、欧米や新興民主主義諸国において、近年急速に研究が進展しているにもかかわらず、日本ではこれまで体系的な研究が行われてきませんでした。しかし、政治資金の不透明な支出が頻繁に取り沙汰されたり、選挙における不正が後を絶たない日本においても、アカウンタビリティを確保するための制度や政策をどのように作り上げていくかという課題は、重要性を増しつつあります。
本書は、日本におけるアカウンタビリティの政治学研究の発展を目指すとともに、日本を含む民主主義諸国が抱えるアカウンタビリティの問題の理解、およびその解決に向けてどのような改革が各国で行われてきたのかを体系的に研究した、先駆的な業績といえます。まず、アカウンタビリティ概念についての定義、類型化、および分析枠組みの提示を行った後、世界各国でアカウンタビリティの向上を目指す改革がどのように進展してきたのか、について、日本を含むアジア、欧米、ラテンアメリカの事例に着目し、実証的に比較?分析しています。この本が、政治学分野におけるアカウンタビリティ研究のさらなる発展を促すものになることを期待します。
なお、本研究は、日本学術振興会科研費?基盤 (B)「アカウンタビリティ改革の包括的研究」(課題番号:23330043) の助成を受けたものです。
国際協力研究科?准教授 高橋百合子