ヨーロッパで地域統合が始まった1950年代初頭、今日のEUへとつながる発展をどれほどの人が予想し得ただろうか。フランスとドイツという戦争を繰り返してきた隣国同士が、対立どころかむしろ平和共生の手本を示すまでになったのである。
翻ってアジアを考えると、冷え込む日中関係、日韓関係の現状をみると、とてもヨーロッパのような地域統合が可能とは思われない。ただ、仏独と同様、互いに隣国同士であることには変わりはなく、国の壁をこえて平和共生の道を探る努力は続けなくてはならない。
本書は、最初から「できる」「できない」と決めつけるのではなく、横たわっている問題点をアジア地域内部の視点から、さらには広くグローバル社会の視点から検証し、加えて歴史、思想、安全保障、文化交流、国際政治経済といった理論的な文脈から学際的?多面的に検証を行い、アジア地域の将来を考える糸口を提示している。
国際文化学研究科?教授 坂井一成