本書は「中国革命支援」と「中国侵略」という二つの歴史の側面によって分断された歴史観を乗り越え、まず、いくつかのこれまであまり注目されていなかった日中関係の歴史の場面を再現し、その節目節目に、清国の外交官、革命派、日本政府、軍、民間人、大陸浪人などが各々どのような考えに基づいて互いに観察、接近または疎外したのかを検証する。
次に、このような検証を通じて、その接近と疎外を貫く共通の理念と思想的関連を見出し、そしてこの共通理念と思想的関連がその後の日中関係にいかなるインパクトを与えたのかを分析する。
最後に、戦後の日本人と中国人による相互認識が変容するプロセスを整理し、日中関係が歴史上の接近と疎外を促した共通の理念と思想的連関から脱出したかどうかを分析し、またその原因の究明に務める。(本書「序言」より)
国際文化学研究科?教授 王柯