本書は神戸大学の総合教養科目「学校教育と社会」および非常勤講師として勤務している大学で担当している「教育社会学」の指定教科書である。神戸大学では平成28年度から、かつての教養原論を基礎教養科目と総合教養科目に分け、さらに高度教養科目というカテゴリーを新たに設けた。平成28年度以降の神戸大学の科目区分においては、「学校教育と社会」は総合教養科目に該当する。総合教養科目とは、「多文化に対する理解を深め、多分野にまたがるグローバル?イシューを考え、対話型の講義を取り入れるなどの工夫により、学生の複眼的なものの見方、課題発見力を養成することを目的とする」(神戸大学HPより)科目群である。新たなる「学校教育と社会」もその趣旨に基づいて行われる。
同授業は、平成27年度まで「(旧)学校教育と社会」として半期15回で行われていた授業をクォーター制に基づき8回分に再編成した授業であり、「(旧)学校教育と社会」の前半部分に当たる。「学校教育と社会」では、教育社会学の視点から(教育学の視点からではなく)の「学校教育と社会」との関わりについて分析し、一般論を述べると同時に、日本および先進諸国の事例を随時織り交ぜて行う。とくに、英米を中心とする先進諸国の事例を多く織り交ぜている。
上記の通り、本書は平成28年度からの新たな授業に備えるためのものであるが、その一方で、平成27年度をもってちょうど25年を迎える、筆者の大学教員生活の「教育活動の集成」という意味も込められている。大学院入学後これまで7年~9年ごとに「研究活動のまとめ」としての単著をまとめてきた。だが、本書が前書の刊行後4年しか経過していないのは、「研究活動のまとめ」ではなく「教育活動の集成」だからである。「25年もかかってこの程度か」という声も聞こえてくるが、国立大学教員としてまとめる責務があると考え、拙いながらにまとめたわけである。なお、「研究活動の集成」については数年後に予定している。
筆者は本書を大変楽しみながら執筆した。これほど楽しく執筆したのは初めてである。学生にあれを教えよう、これを教えようと資料を引っ張り出してはうだうだと加筆した。ただ、その楽しい執筆を支えてくださったのは田中千津子社長をはじめとする学文社編集部の方々である。いつもながら、出版に関してわがままを聞いてくださる田中社長はじめ編集部各位に厚く御礼申し上げる。また、本書の第2章にみられるイラスト4点は、筆者の教え子である愛知教育大学講師の武寛子氏によるものである。生真面目な武氏は筆者の旧著のためにこれらのイラストを懸命に考えてくださったようである。感謝したい。
大学教育推進機構/大学院国際協力研究科?教授 山内 乾史