地域経済を支える中小企業の生産性を向上させ、地方創生を実現していくために地域金融機関の役割に期待が高まっています。そして、顧客企業を「育てる金融」は地域金融機関の生きる道でもあります。
しかし、こうした課題に地域金融機関が十分に対応できていないとの批判が強いです。その理由を探るために、私たちの研究グループは、独立行政法人経済産業研究所の研究プロジェクトとして、全国の地域金融機関の支店長向けに大規模なアンケート調査を実施し、約3000人から回答を得ました。これだけの数の支店長の生の声を集めた研究は他にはありません。
本書は、その回答結果に基づき、地域金融の現場の事業性評価への取り組みの現状と取り組みを進めるための課題を明らかにし、人事評価改革や外部専門家等との連携の強化などの処方箋を提示しています。また、本書には、我々研究者の分析に対する実務家的な観点からのコメント論文や、研究会メンバーによる地域金融の重要問題を扱った論考も収録していますので、地域金融に対する多角的な理解が可能になります。
金融仲介機能の質向上の取組みに大いに参考になるものと自負しています。
社会システムイノベーションセンター教授、副センター長 家森信善