ラテンアメリカ諸国が豊かな天然資源を持ちながら安定的な経済発展を実現できない状況において、所得格差問題は歴史的に形成された前提条件であると同時に、不安定な経済発展過程で格差を維持ないし拡大する自己組織化のメカニズムを内在する構造的問題でもある。
本書はこのような視点を持ち、グローバル化や経済自由化が進むラテンアメリカにおいて、社会の複雑な相互作用が引き起こしている発展停滞の現状を読み解くことを目的としている。
政府が社会政策によりどのように対処しているのか、また市民社会が連帯して「下からの」対応をどのように試みてきたのかについても述べられている。類型化した2つの典型例としてメキシコとブラジルの事例分析も行っている。
経済経営研究所 教授 浜口 伸明