日韓の歴史認識問題をこれまでの政治過程を丹念に辿って分析した『日韓歴史認識問題とは何か』に大幅な改訂を加えた英訳書。
本書は、2014年に出版された『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房) の大幅増補改訂、英語版著作である。周知の様に日韓関係は日本語版が出版された2014年10月から4年以上を経た今日においても、むしろ悪化を続けている。本書はこの様な状況の中、深刻化する日韓関係のメカニズムをより広く国際社会に説明し、また新たなる状況に対応すべく書き直したものである。
本書における改定点は大きく二つである。第一に、元来がコラムとして書かれた本書を学術的な体裁に整えるために、多くの文章を入れ替え、その論理関係を明確化する事に務めた。英語版の読者の多くは一般の人々というより、日韓関係や歴史認識問題に対する深い関心を持つアカデミックな人々であろう事が明らかであり、その需要にこたえる為である。第二は注釈の追加である。日本語版原著は「一般の人が読みやすいものにしたい」という出版社の希望から、敢えて注釈をつけずに出版したが、本書ではアカデミックな関心を持ち、また筆者の叙述の根拠を確認したい人々の必要性に応える為に詳細な注釈をつけている。各章の構成等も必要に応じて一部変更しており、また単純な事実の間違いには訂正をも加えている。その意味で本書は日本語版原著を持つ著作であると同時に、それを英語版に向けて大幅な改定を加えた、事実上異なる著作である、という性格をも同時に持っている。
日本に住む韓国政治或いは日韓関係の研究者として、少しでも我々が住む地域の問題を世界の多くの人に知ってもらいたい。本書がその一助になれば大変幸いである。
大学院国際協力研究科 教授 木村 幹