生命保険や損害保険は、専門用語も多く、理解が難しいことも多いですが、私たちの生活になくてはならない身近な金融商品です。金融経済教育推進会議 (事務局:金融広報中央委員会) が作成している「金融リテラシーマップ」では、保険に関して、「自分自身が備えるべきリスクの種類や内容を理解し、それに応じた対応 (リスク削減、保険加入等) を行うことができる」ことを目指すべきだとしています (大学生や社会人の場合)。まさに、これは本書が目指していることです。
本書は、2015年に刊行した『はじめて学ぶ保険のしくみ<第2版>』の改定版です。(第1版は2009年の刊行です。) もちろん、保険のしくみの根本的な部分に変化はありませんが、経済社会の変化に応じて、保険市場のあり方も変わらなければなりません。また、長寿化の進展やIT技術の進化、サイバーリスクの顕在化などに伴って、保険が対処すべきリスクも多様化しています。
この第3版では、最近の動きを受けて「はじめて学ぶ」初学者の皆さんに説明しておきたいと私たちが考える項目を新たに盛り込んだり、従来の説明を改訂したりすることにしました。たとえば、制度共済と少額短期保険業 (第4章) 、顧客本位の業務運営 (第5章)、保険ショップなどの販売チャネル (第7章)、トンチン年金などの最近関心を集めるようになった生命保険商品 (第8章)、インシュアテック (第10章、第14章)、時代のニーズに応じて開発された保険商品 (第11章)、高齢社会の中での保険の役割 (第15章) などについて、説明を追加したり、説明を補足したりしています。
保険は大変身近なものなのですが、リスクという難しいものを対象にするので、わかりにくい金融商品でもあります。そのために、保険の意味を誤解して、保険に入らない人や逆に保険に入りすぎる人もいます。本書を勉強して、保険が何をどのようにカバーしてくれるのかをよく考えられるようになって、保険を賢く利用してもらいたいと思っています。
経済経営研究所 教授 家森 信善