青年期における対人恐怖傾向と自己愛傾向に関する心理発達的研究

青年期における対人恐怖傾向と自己愛傾向に関する心理発達的研究

青年期の対人恐怖傾向と自己愛傾向を関連付けて、その心理構造を解明する。一般青年対象の調査研究に基づき、一見相反するふたつの傾向から、青年期特有の矛盾葛藤を考究。

  • 著者
  • 相澤直樹
  • 出版年月
  • 2021年01月
  • ISBN
  • 9784759923544

対人恐怖傾向と自己愛傾向は、ともに我が国の青年に広く認められる心の悩みや行動傾向として、これまでにも多くの研究がなされてきました。対人恐怖傾向は、従来日本独自の精神疾患として青年心理学、臨床心理学、人格心理学の分野で早くから注目されてきたものです。また、自己愛傾向は、欧米圏の精神医学領域において自己愛性人格障害の研究が着目されるにつれ、我が国でも注目されるようになってきました。ただし、いずれもが別々に研究されるにとどまり、両者を関連付けて研究がなされたことはこれまでほとんどありません。しかしながら、対人恐怖傾向と自己愛傾向は、青年にとって羞恥心と尊大さが表裏一体の関係にあるように、ともに互いの背景で機能して青年期特有の矛盾葛藤を反映しています。本書は、以上のような観点に立って青年期の対人恐怖傾向と自己愛傾向の心理を解明するものです。本研究の成果は、青年期の心理的発達の解明に広く寄与するものであり、また、同時期に広く認められる心の悩みとしての対人恐怖傾向、ならびに自己愛傾向の低減や改善に役立つことが期待されます。

人間発達環境学研究科 相澤直樹 准教授


目次

  • 第1章 青年期の心理発達と対人恐怖傾向、自己愛傾向
    • 第1節 はじめに
    • 第2節 青年期の心理発達
    • 第3節 青年期における自己確立の課題と対人恐怖傾向、自己愛傾向
    • 第4節 本研究の目的
  • 第2章 青年期の対人恐怖傾向と自己愛傾向における自己意識の特徴―自己の二面的矛盾構造の観点から
    • 第1節 対人恐怖傾向と自己愛傾向における自己の特徴
    • 第2節 対人恐怖傾向と理想自己-現実自己不一致の関係(研究1)
    • 第3節 対人恐怖傾向、ならびに、自己愛傾向と自尊感情の不安定性の関係(研究2-1)
    • 第4節 対人恐怖傾向、ならびに、自己愛傾向と自己不一致の不安定性の関係(研究2-2)
    • 第5節 自己の観点から見た対人恐怖傾向と自己愛傾向の規定要因(研究3)
  • 第3章 対人恐怖傾向と自己愛傾向の起源を探る―原初的体験の観点から
    • 第1節 対人恐怖傾向と自己愛傾向における対人関係の特徴
    • 第2節 原体験理論から見た青年期の心理発達,ならびに,対人恐怖傾向と自己愛傾向
    • 第3節 対人葛藤場面における他者の意図の判断と情緒的反応(研究4)
    • 第4節 対人葛藤場面における他者の意図の解釈と対人恐怖傾向,自己愛傾向の関係(研究5)
    • 第5節 対人恐怖傾向(社交不安)に対する嫌悪判断と自動思考の効果(研究6)
    • 第6節 自己愛傾向に対する敵意帰属と怒りの効果(研究7)
  • 第4章 総合考察
    • 第1節 本研究の概要
    • 第2節 自己の観点から見た対人恐怖傾向と自己愛傾向の特徴
    • 第3節 原初的体験の観点から見た対人恐怖傾向と自己愛傾向
    • 第4節 対人恐怖傾向,自己愛傾向にみる青年期の心理発達の意義
    • 第5節 対人恐怖傾向と自己愛傾向の共通性と差異について
    • 第6節 対人恐怖傾向と自己愛傾向の両者を取り上げることの意義
    • 第7節 本研究の課題と今後の展望
  • 付録 精神障害の発生と維持に関わる認知の偏りに関する研究
    • 第1節 認知の偏りと精神障害
    • 第2節 注意と記憶の偏りと精神障害
    • 第3節 各精神障害に特有の認知の偏り
    • 第4節 まとめと今後の展望