国際紛争、経済格差の拡大、そしてパンデミック。文明社会が容易に解答を見出せない問題に直面するなか、求められている倫理とはどのようなものなのだろうか。本書はこの問いに応答するための鍵概念として「責任」に着目する。リスク社会、政策決定、政治過程、隣人、公平、ジェンダー、企業といった領域に生じている問題を分析するなかで、「責任」という手垢のついた概念を再検討し、時代に対応した形に鍛えなおすことで、問題解決への糸口を探っていく。新たな時代の倫理を示す、総合的研究の成果。
ミネルヴァ書房 書籍紹介より
目次
- 序 章 現代的な不安と責任という倫理
- 第1章 リスク社会における責任と倫理――混乱を克服するために
- 第2章 許容可能なリスクの責任ある決定――費用便益分析と契約主義
- 第3章 公共政策と責任――コロナ禍の政策過程
- 第4章 隣人への責任――ケイパビリティと「外出自粛」
- 第5章 責任の基盤としての自制――アダム?スミスと「公平な観察者」
- 第6章 ジェンダー正義への責任――ロールズ「財産所有のデモクラシー」の可能性
- 第7章 企業の社会的責任の展開――レスポンシビリティを組み込むために
- 終 章 責任という倫理が成立する条件