西洋文化の頂点、バロック美術。17世紀を中心に花開いたバロックの建築?彫刻?絵画は、ルネサンス期の端正で調和のとれた古典主義に対し、豪華絢爛で躍動感あふれる表現を特徴とする。本書は、カラヴァッジョ、ルーベンス、ベルニーニ、ベラスケス、レンブラント、フェルメールらの代表的名作を網羅し、美術史上の位置づけ、聖俗の権力がせめぎ合う時代背景など、バロック美術の本質を読み解く。時代ごと地域ごとではなく、7つのテーマに沿って論じた。
本書は企画をいただいてから20年以上たち、還暦を迎えた今年にようやく書いたものだが、私の長年の研究の成果となっているため、今までの拙著や論文と重なる部分もある。日本では意外なほどバロック美術の入門書はなかったが、本書は入門書であると同時に近年の美術史学の成果を盛り込んだ学術書となっている。新書には珍しく、カラー写真200点以上で、手に取ってご覧いただければ幸いである。
必威体育研究科?教授 宮下規久朗