日本は世界一のヌード大国である。街角や駅前にブロンズの女性ヌード彫刻があるだけでなく、週刊誌のグラビアには、以前よりだいぶ減ったとはいえアイドルやモデルのヌード写真が載る。日本人がいかにヌードを受け入れ、あるいは反発し、流行させるにいたったのか。また、日本の刺青 (入れ墨) は世界最高だとされ、外国から熱いまなざしを注がれてきた。しかし、現代では裏社会の象徴として否定的なイメージを与えられている。裸体が芸術となったヌードと、裸体の上に施された芸術である刺青とはどのような関係にあるのか。
そんな問題意識から、2008年に『刺青とヌードの美術史』(NHKブックス) という本を書いた。それから16年たち、屋外のヌード彫刻は邪魔者扱いされるようになり、刺青はますます隠される傾向にある。そこで、今回この本を文庫化するに当たって増補改訂し、最近のヌードと刺青にまつわる話題も加えてアップデートをはかった。身近なヌードについて考えるきっかけになれば幸いである。
必威体育研究科?教授 宮下規久朗