1902年の神戸高等商業学校の設立以来、経済学や経営学を中心に実学を重視してきた歴史を有する神戸大学は、現在のビジョンでも「学理と実際の調和」を理念として掲げておられます。今回の環境報告書においても、現状を表す数値と現実を直視した方向性を中心に、要点を押さえた報告がなされています。武田学長からのメッセージにある諸問題解決への社会実装には統合的なアプローチが必要との指摘は、環境管理に通じる点であると同時に神戸大学の伝統でもあるのでしょう。
神戸大学環境報告書2015では、例年どおりの網羅性のある環境パフォーマンス情報が提供されています。容器包装への取組みとして、神戸大学発の「ごみじゃぱん」減装包装へのチャレンジが、トピックスとして紹介されていることは特筆できる点です。しかも学部生の著者名での報告となっていることは、社会性を有する課題がゆえに非常に好ましく読むことができます。環境報告書のなかの省資源?リサイクルという観点では、水使用量、一般廃棄物、紙使用量に関わる報告が行われています。日本の個別リサイクル制度では、事業所への直接的な規制や強い誘導方策は講じられてはいませんが、食品リサイクルや家電リサイクルなど大学が関連する対象も多くあります。こうした対象をどう考えるか、一つの課題であるように思います。加えて、CO2排出量については、昨年度の第三者意見で植田教授から指摘のあったところですが、「第2期中期目標期間中のCO2排出量を原単位で15%削減」へのパフォーマンスや対策が、引き続き、期待されるところです。多くの大学で共通の課題ではあり、引き続き注目しています。
人類や地球の将来、大学自体の存在に関わる課題の一つに、この報告書が対象とする環境や持続性に関する課題があるわけですが、その趣旨からみて神戸大学環境報告書には充実したトピックスの掲載があり、挑戦への端緒を知らせるポイントを押さえた読み物としての価値を併せもつ報告となっています。「環境報告書を読む会」を開催し、環境学入門受講者からのフィードバックを進めている点も、いいPDCAサイクルへの取組みといえます。
そして、毎年の表紙の写真は、多彩な神戸大学の顔が提供されており、多くは緑があることでいい雰囲気が醸し出されています。引き続き、いい環境管理といい報告を期待しています。