私は、環境配慮促進法により、国立大学法人等に環境報告書の作成?公開が義務付けられた2006年以来、ずっと京都大学の環境報告書に携わってきました。当時、京都大学の環境管理を担う一員(神戸大学の環境保全推進センターにあたる京都大学環境科学センターに所属)であったことから、特に最初の数年は、体制構築、構成からデザイン、執筆プロセスに至るまで、まさに魂を入れ込んで、作成にあたっていました。ある意味では、私の原点とも言える取り組みの一つとなりました。いろいろな工夫が評価され、様々な表彰なども頂きました。しかしながら、この数年、私自身、本学の報告書へのコミットは形骸化してきたな…と自覚しておりました。そんな矢先に頂いたのが、この第三者意見のご依頼でした。
貴学の環境報告書を受取る前は、どのような気持ちで読もうかと、少し悩んでもおりましたが、ページをめくった途端に、そのような心配は無用であったことがわかりました。藤澤学長の安定感あるご挨拶に続く、森センター長の本音のにじみでるようなメッセージ、大変勉強になる先端の研究?活動紹介、将来世代とのコミュニケーションに関する充実した情報提供、要領を得た環境パフォーマンス情報の提示。あっという間に読むことができました。デザインも、誰もが手にとりやすいものにまとまっていると思います。
内容についても、少し触れさせて頂きたいと思います。私が注目したのは次の3点です。
- 学生さんの参画:「一人でも多くの学生さんに環境報告書を知ってもらいたい」との思いが、表紙デザイン募集や取り組み紹介記事など、随所に現れており、大変好感を持ちました。発行後は、是非、学生さんらの力も借りて、SNSでの発信などを含め、広がりを期待したいと思います。
- カーボンニュートラルへ:大学そのものとしても、研究?教育活動としても、正面から向き合っていく姿勢が示されています。環境パフォーマンスデータでは、アフター?コロナに向けた対応において、負荷が上昇する傾向も見られ、簡単にはいかないことが示唆されていますが、中長期的な視点からの分析と、今後のより詳細な取り組みに関する発信を期待したいです(私たちも学ばせて頂きたいです)。
- 循環型社会構築へ:カーボンニュートラル社会においても欠かせないのが資源循環、循環経済への舵切です。今回は、特に神戸市などと連携したプロジェクトについて多くの紹介がありました。学術的な価値創出もさることながら、コミュニティにおける社会実装の意義も大きいと考えます。これが、学内外により一層インパクトを持つことを期待したいと思います。
拝読しながら、改めて私自身、原点に戻る想いでした。編者やそれぞれの書き手、紹介された方々の想い…行間から、様々なことを勝手に想像し、思いを巡らせておりました。このような機会を頂き、感謝すると同時に、関係者の皆さまに深く敬意を表したいと思います。